「韓国の大河ドラマをご堪能下さい!韓流ファンには堪らない作品だろうね」王になった男 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
韓国の大河ドラマをご堪能下さい!韓流ファンには堪らない作品だろうね
イ・ビョンホンが王様とその影武者の2役を演じるという本作に、きっと彼の今迄に無い新たらしい俳優としての一面を観る事が出来るかも知れないと期待して観てみるが・・・
彼が俳優として演技力が無いとは思わなかったが、映画のオープニングシーンの15分程では、この映画の時代に君臨していた王様である光海の暴君ぶりを描いていくのだが、その過程が酷く退屈で、正直嫌になった。
それに次いで、影武者が王に成り替わった当初のエピソードには、とても下品なシーンが有り、観ているこちらの方が恥ずかしくなり、笑えるシーンなのかも知れないが、呆れ果てもう帰ろうかと思っていたが、しかしほぼ満席の観客で埋め尽くされている試写会場を後にするのは気がひけて、ひたすら我慢して観ていた。その試写会場では、大勢のご婦人方が来場していたのだが、彼女達の間からは、同じシーンを観ているにも関わらず、笑い声が漏れ聞こえてくるのだった。始めは笑いのツボが違うのかも知れない原因は、韓国の人達と自分の日本人としての笑いのツボの相違による、国民性の相違からくるもので、自分が馴染めないだけだと思っていたのだが、しかし試写会場におられる多くの御年配の御婦人方にはうけている様に見えるのだった。イギリスやフランス映画などでもセリフの意味は理解出来ても、決して笑えずにシラケテしまう事も多々あるものだが、それは日々の習慣的に経験している事柄の相違から生れる、文化背景の違いに起因しているのでいたし方無い事だ。それはむしろ異文化を理解する上でとても貴重で大切な経験で、役に立つプロセスなのかも知れない。
そして物語は、徐々に影武者であるはずの偽の王様が当時行われていた政治の実態を知り、国の在るべき未来の姿の理想を掲げ、その理想へ向けて、政治に真剣にのめり込んでゆく彼の変化のプロセスを、時にシリアスに、そしてユーモラスに描いてゆくので、私も段々と感情移入して物語へと入り込んでいく事が最終的には出来たのでホッと一安心出来て良かったのだ。
私は邦画及び、ハリウッド映画を中心に映画を観ている関係上、過去には韓国の映画は10
本程度しか観ていないのだが、その映画の多くにはイ・ビョンホンの作品が偶然にも多数あるのだった。こうして本作品を観ていると「JSA」で魅せていた彼の魅力とは異なったやはり俳優として成長した彼の姿を観る事が出来たのは確かだ。
この物語の後半で影武者は、暴君として君臨していた本物の王様よりも、より王様らしい政治を司る事が出来るタイクーンへと成長しているのがとても恰好良く見えてこの映画の見所の一つと言えると思う。そんな3週間程で、立派な政治家へと成長する事など現実的には有り得ない事なのだが、映画なれば、韓国の理想の姿とでも言うべき政治の在り方が描かれているのだろう。
我が国日本とアジアに於ける緊張状態が続いている現在、日本でも、そして韓国もより優秀で、人望のある政治家による政治が行われる日々が一日でも早く実現出来る様に祈るばかりである。この映画を観た人々の気持ちが、異文化圏に対して、徐々に理解を深め相互理解の道を歩む事が出来たなら本当に嬉しい限りである。