「彦一の筋の通し方。」任侠ヘルパー ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
彦一の筋の通し方。
連続ドラマもスペシャル版も見ておらず、友人に凄くイイよと
薦められて一緒に観に行くことになった矢先、TVで再放送、
これはいいタイミングだ、見ておこう~と録画して見てみた。
まぁジャニーズの草なぎ君にアイドル連合体のような作品だと
軽く構えていたら、あらまぁ!見事にハマってしまった。
元々彼は俳優としての評価は高かったけど、ここまでこの役に
合っているとは思わなかった。低音ボイスで啖呵をきると正に
どっかのヤクザの兄ちゃんが喚いているような感じ^^;
身体の線も細く顔もカッコいいワケではない(ゴメンね)
どう見てもヒーローには思えない彼が貫くのは任侠道、しかし
これが全く巧くいかない。どんな理想を掲げても、このご時世
易々と極道者が生きていかれるはずもない。
弱きを助け強きを挫く、をヘルパーの世界に当てはめたのが
斬新で面白い。あり得ない世界観をよくぞドラマに持ってきた。
今作もまるで世相を反映させた見限られた介護施設の惨状が
非常にリアルで胸に迫る。あんな汚いところによく自分の親を
入れられるなと思うが、身内もなく貧困ビジネスに巻き込まれ、
年金全てを失った老人たちが押し込められているという背景…
金もなく行き場を失った痴呆老人はその道を辿るしかないのか。
自分の親がああなるかもしれない未来を迎える身としては、
どこを観ても身につまされる。まさかもちろん自分が生きている
限りあんなところに押し込む気はないが、これから先どうなるか
の予測は、今の日本ではたてようがない。せめて今をどう生き、
家族が健康で安心して暮らせる毎日を営んでいくだけである。
香川照之が演じる八代議員が掲げる、閉鎖施設を再利用した
介護施設の拡張と町づくりには賛成だが、最近は私の地元でも
介護施設の建設ラッシュである。高額費用を払っても安心して
任せられる施設へという家族の気持ちは分かるが、住み慣れた
我が家を離れたくない(あるいは他人の世話になどなりたくない)
親世代の気持ちは、ほんの短期間入院をした両親の言動からも
よく分かる。しかし現実的にヘルパーさんなしに自宅介護をする
のは非常に厳しいはずだ。年金があってよかったとは、もはや
これから先の年金問題からすれば望めない。自活死活問題だ。
考えればキリのない問題を真っ向から描いているが、
その打開策は意外な方向転換から介護の姿勢意識を変えていく。
やっと施設に明かりが見えた頃、極道の仕打ちが彼らに下される。
草なぎ君をはじめ、老人役の俳優たちの演技が見事な点、
夏帆や風間俊介の意外な役作りも面白かったが、
本当のヤクザの仕打ちはあんなものでは済まないはずである。
そこまであまりにリアルにしたらもう、ドラマではなくなってしまう
ところから、ややソフトに仕上げている後半部分、黒木メイサが
登場(このヒトだけなのね、出たのは^^;)して彦一を助けるシーン、
そのあたりからは駆け足状態で話が進んでしまう。彦一が身体を
張って施設を守ろうというシーンも、すんでのところで八代が参戦、
殺戮シーンなど見たくない視聴者の気持ちを汲んでいるなと思える。
笑えるもシーンあり、(でも終始草なぎ君が無表情なのがいいわね)
涙するシーンもあり、ドラマファンを裏切らない彦一が描かれている。
すべてに完璧性がなくヒーローではない彦一がカッコいいのは、
人情に長け、相手の期待を裏切らない、考えずにブチ当たる剛毅、
でも終いにはトンヅラするっていう(爆)小男ならではの筋の通し方。
あくまでその姿勢を最後まで貫き、これまた続篇ありきなエンドには
またコンビニ店員から始めてもらいたい^^;そんな気さえしてしまう。
(夏川結衣はどうなったんだろうね…見たかったなぁ。りりィはさすが)