「単なる暴力礼讃映画」悪の教典 flying frogさんの映画レビュー(感想・評価)
単なる暴力礼讃映画
文庫本の解説をこの映画の監督の三池崇史が書いてて、それを読んで映画を観る気は失せていたのだが、連休の暇つぶしにレンタルで鑑賞。
思ったとおり。暴力好きの三池崇史らしい、原作からハスミンのサイコパス全開のエグさを薄めて「惨劇の夜」の凄惨さだけを嬉々として撮った監督の笑顔が背後に浮かぶような映画になってた。
や、元々原作にもたいしたテーマ性があったわけでもないんだけどさ。
いくつかの原作からの改変箇所のおかげで、ハスミンがクラス全員虐殺を決意した理由が判りにくくなっている。
だって原作ではあの時点で、確かにハスミンにとって事態は致命的だったわけで、それを切り抜けるためには、その場にいた全員(つまりクラス全員)を一夜のうちに速やかに皆殺しにするしかなかった状況。
だからといって本当に短時間のうちに計画を練って実行してしまうところがハスミンの人間離れしたところなのだが、映画ではほんのわずかな違いによって、ちっとも致命的ではなくなってしまっている。
なのでクラス全員虐殺、に着手したハスミンの動機が、原作未読の人にはさっぱり判るまい。
学校にはびこる腐食を一掃するために、なんて勘違いをする人まで出てくる始末。いくらなんでもそれは原作未読でも映画のそこまでの話をちゃんと見てれば、そんな正反対の勘違いはしないだろうよ・・・と思うんだけどな。
文庫本の解説で、三池崇史がハスミンを英雄視したようなことを書いていたので、こういう映画を作るような気はしていた。
元々の原作も、いくらサイコパスでも「惨劇の夜」はやりすぎ感が大きかったのだが、そこに惹きつけられてハスミンを英雄視するのは胸糞が悪い。
確かにこの手の暴力描写には一種の爽快感がある。でも、そこを正当化しちゃいかんでしょ。
1から100まで自分の都合だけで殺戮をしたハスミンを英雄視できる神経は理解できないし嫌悪感を持つのも当然。
大島優子は正しい。