「プロパガンダ映画かも知れないけれど」ネイビーシールズ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
プロパガンダ映画かも知れないけれど
物語展開もカメラ回しも含めて『コール・オブ・デューティ』
実写版みたいな勢いのド迫力軍事アクション!
……ぬぁんて例えを言ってもね、ゲームの話をしても大抵の人はピンと来ないっすよね。
映画の話をしましょう映画の話を。
ホンモノの海兵隊が主演をこなし、実際に映画内での作戦も立案したという本作。
流石はプロ。
銃捌き、気迫ある表情、指先での意志疎通など、その軍事行動のリアリティたるや凄まじい。
なかでも序盤のパラシュート降下後、
敵の気配を確かめる為に森の中でじっと息を潜める場面にゾッとした。
つい10分前まで冗談を言い合っていた連中が、
一言も発さず、金属のように硬く冷たい表情で暗いジャングルに佇んでいる。
ああ、これが人殺しも辞さない者達の表情なのか。
極論を言ってしまえば、
彼等の正確無比なアート・オブ・ウォー(殺しの技法)なんて必要無い世の中が一番ですよ。
けど正直、それは人類が続く限り存在し続けるのだろうと言うある種の諦念。
背負いたくもない人の咎(とが)を敢えて背負っているのが彼等なのだと思う。
ま、ぶっちゃけ米軍のプロパガンダ的な要素を多分に含んだ映画だとは思う。
最後のナレーションも「さあ軍に入って国を守ろう!」という風にしか聞こえず、
その宣伝の“臭い”が鼻に付いた。
だが、大事な人々の為に命を賭して戦い続ける人々には敬意を払わずにいられない。
国を守る事とは、その国に住む家族を守る事。
愛する家族への想い、家族を持つ仲間への想い。
映画で描かれた彼等の想いに嘘偽りは無いと僕は思う。
偽りがあるとすれば、それは彼等を手駒として使う連中の側を探した方が早い。
不満点は、物語展開が愚直なまでにストレートである故、
アクションは凄まじい迫力だが、中盤以降で激しく中弛みを感じてしまう点。
(序盤のカーチェイスが活劇としてのピークだったかな)
そして、同じく彼等なりの論理で正義を成そうとするテロリストが
ステレオタイプな悪党にしか映らなかった点。
まあ一般市民を言葉巧みに操り自爆させる連中に正義もクソもあるかと激怒は覚えるし、
米軍のPR的映画でテロリストに同情的な視点を設ける訳も無いのだが、
それでももう少し造形に深みと現実味のある敵が欲しかった。
あと、主人公の方々は本業の役者では無いので、演技は……
ええ……まあ……うん……そこは大目に見ましょうという事で(笑)。
<2012/6/24鑑賞>