劇場公開日 2012年5月12日

「観れば観るほど味が出る日本人必見の物凄い映画」この空の花 長岡花火物語 junnosさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0観れば観るほど味が出る日本人必見の物凄い映画

2012年5月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

知的

”転校生”、”時をかける少女”の大林監督作品。新潟県長岡の空襲で死んだ赤ん坊が18歳の女子高生”花”として現代に甦り、長岡花火の夜、「まだ戦争には間に合う」という演劇を上演。戦争を知らない現代の人々にその悲惨さを伝え、またやって来るかもしれない次の戦争への警告を投げかける。

はっきり言って物凄い情報量!旭日小綬章受賞後、そして大病後の大林監督の"映画への"そして"戦争を忘れぬ"という思いが"長岡”という素材を使ってふんだんに表現されている。幹となるストーリー(フィクション)はあるが、その枝葉についた情報はまさにドキュメンタリー。戊辰戦争から、太平洋戦争、中越地震、東日本大震災、そして撮影が始まる直前の花火大会会場を滅茶滅茶にした未曾有の豪雨まで、長岡の歴史、記録がそのまま詰まっている。この"セミドキュメンタリー"という形をとりながら、通常の映画の5、6倍もの数のカットを使い、その情報量をこなすため、コミカルなカット割り・テロップなども屈指、劇中劇あり、カメラ目線あり、某脳科学者の理論?も取り入れたサブリミナル効果?張りの、高嶋政宏さんの言葉を借りれば"若手の映像作家も舌を巻く"実験的な作品なのである!!

物語は、大林監督自身の長岡での感動体験(監督自身"長岡ワンダーランド"と呼んでいる)を、天草の新聞記者玲子(松雪泰子)に追体験してもらっている。そして観客もこれに乗る。最近の映画で言えば、惑星の原住民との生活を観客と一緒に体験する形でヒットした「アバター」。物語最後の"花"は「時をかける少女」の甘酸っぱいラストとも重なる。軸となるストーリーは緻密で、無駄なところはほぼ無いのでは。伏線の張り方では例えば「バックトゥーザフューチャー」。だが伏線どころか、監督曰く「論文を読み解くように」観れる作品でもある。

で、問題はこの映画をどう観ればいいか。大きく分けて2つ。ひとつはフィクションのストーリーをメインに捉え、細かいドキュメンタリー部分は"場面"をまとめて捉え中身までは深入りしない。4、5時間掛かる内容を2時間40分に凝縮しているため最後まで集中力が続かない恐れがあるのである。そしてもうひとつの見方は徹底的に細部まで理解することに挑戦する!ではどっちで観るか。楽しくなければ始まらない、と思えば前者であるし、とことん理解して「学び」「謎解き」を楽しんでやろう、と思えば後者。但し後者の場合1度では無理。監督自身も「8回見て・・」(!)と述べられている。しかしながら何度観てもその度に新たな発見があることだろう。例えば"花"はなぜ今現れたのか?映画の中に答えは隠されていた。私自身、2回目に気付いたのであるが・・。

junnos