劇場公開日 2025年11月14日

「残すべき作品、でも手放しに褒められない、けど素晴らしい」天使のたまご はりきりハムさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 残すべき作品、でも手放しに褒められない、けど素晴らしい

2025年12月23日
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鑑賞方法:映画館

知的

斬新

天野喜孝をアートとしても堪能出来る素晴らしい作品
某果てしなきアニメ映画で、整合性がない、説明不足、なんで恥ずかしがってるの?と怒っている人は観れないかも。
答えが明確に用意されているわけでもなく、整合性もなく、暗い背景が続く世界観です。

ネットには解説もありますが、解釈は人それぞれ、まずは観て、感じてほしい

映画館の大画面に鮮明に一つ一つ刻まれた緻密な線、重い影色、セル特有の無骨なのに優しい色合い
小林七郎の背景は力強いタッチと闇の中であっても安明をもたらす表現の緩急が素晴らしい
暗い背景に、ぽうっと、まるで光っているように美しい肌色 大きな目に、瞬けば音を立てそうな長く繊細なまつ毛
テレビ画面では味わえない豊かな表現が堪能できます。

人は信じたいし安心したい。勇気を持って信じてみたら、信頼されてしまった人はどうするのがいいのでしょう

当時のOVAでは莫大な予算を注ぎ込みましたが興行は振るいませんでした。押井守は仕事を続けなければ生活出来ない状況となり沢山名作が生まれます…これも因果ですかね。
この映画の世界と重なって見えます

費やした手間、特に作画、撮影、特効に置いてはその手間の割に売り上げだけでなく、表現できたことも少ないかもしれません。しかし実際に試してみた、やりきった、世に出した、それは素晴らしい功績。この作を表現する為に現場がアイデアをだしあって試行錯誤して学んだことは多く、それは今後の商業作品、アート作品の財産となっているでしょう

没入感に今ひとつ達しないのは音楽が大きい。音楽がもっと静かなら、無理に感情を引き出そうとしなければ、没入感が得られたのに、なんならセリフをもっと減らしてもよかったかも
そこだけ減点

はりきりハム