「生涯のベスト映画に出会えた喜びはデカイ!」横道世之介 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
生涯のベスト映画に出会えた喜びはデカイ!
先ずは「横道世之介」を撮って下さった、沖田監督を始め、この映画を企画したプロデューサー並びに、出演者の皆様は勿論の事、この映画撮影に関係した総ての方に、ありがとう!と心から私はお礼の言葉を伝えたい思いで気持ちが一杯になった。
こんなに心が温まる映画を観られた事は、本当に嬉しくありがたい事であり、たとえ映画であっても、私もこの映画で、世之介の友達になれた気がして、その事が嬉しいのだ。
気の良い世之介が直ぐに誰とでも友達になってしまうのと同様に、私が映画を通して世之介と友達になったよと、言ったとしても、世之介なら怒らずに受け入れてくれる気がする。
何も80年代と言うあの頃に限った事では決して無いのかも知れないが、誰の人生にとっても、学生時代と言う青春時代は、輝いていて人生の中でもダイヤの様な価値を放っている、たとえそれが浪人生活や、失恋だの、留年などの不運に遭ったとしても、それでも過去を振り返ってみたら、今の自分を支える為に用意された、輝きの時だったと断言しても良い。しかも、本当にあの80年時代は特に時間が未だ緩やかに穏やかに流れるままに、青春を楽しむ為の時間が残されていた時代だ。
今から当時を振り返ると携帯電話も無く、ファックスも無い時代で、地方から都会の学校に出て来て下宿している学生寮などには、エアコンも無いし、今にしては不便極まりない生活だったが、それが普通の生活だった当時の学生時代の私などには、それを不便だと思った事も無く、自分にはそれはそれで楽しい学生生活の毎日だった。
そんな誰の生活にもある学生時代の平凡過ぎるくらいの日常の変化の無い普通の生活の幸せな日々を、淡々と描ききってくれたこの映画は、それだけで素晴らしいメッセージの塊だ。
勉強と、バイトと友達、或いは彼女や彼氏と付き合う事が、誰でも学生なら普通に有って、当り前過ぎ去る普通の時間が、こんなにも尊い事だとは当時は、思いも因らず、無駄に時間だけが過ぎた気がしたりもしたが、その総てが心の財産になっている事を今改めて思い起こさせてくれるこの映画は最高だ。
高良健吾は今回も憎い程良い役を演じていて素晴らしいし、吉高由里子のお嬢様ぶりが、これがまた愛らしくて、愛おしくって最高に似合っていてたまらないのだ。
それともう一つ、この「横道世之介」の物語が、あの12年前のJR大久保駅での人身事故の救出をされ、亡くなられたカメラマンの方のお話だったと言う事を知らなかった私は、更にまた感動的な思いで心が溢れた。あの哀しく切ない事件は今も良く憶えている。ホームからの転落を見た瞬間に反射的に、あのような救出行為を行う事は決して誰にでも出来る事では無く、あのご両人だからこそ、行う事が出来た素晴らしい瞬間の出来事だったと思い、今もあの事故の事は、記憶に深く刻まれている。韓国人留学生については「あなたを忘れない」と言う作品で直ぐに映画化されたが、当時韓流ブームの波に押され、あの日本人カメラマンについては、メディアで殆んど何も語られる事は無かった気がしていたが、今こうして、あのカメラマンの方の青春当時を振り返る映画が出来た事は、日本人として誇らしく嬉しい事だ。あの惨事が起きた事で、その後転落事故防止の為の改善が図られ、転落事故の防止に、今も尚大きくあの事件の教訓が生かされているのだから、決してあのお二人の方の尊いお命は無駄にはなっていない筈なのだ。ご遺族の方には、哀しく耐えがたい重荷であることだろうが、あのお二人が生きていた事の素晴らしさは、私は決して忘れない。そして、この「横道世之介」と言う作品の事も、決して私は生涯忘れる事は無いだろう。最後に再び改めて、素晴らしい映画をありがとう!
人間の人々を想いやる優しい気持ちの大切さと、一人一人の命の尊い可能性を見直す機会を再び映画を通じて作って下さった皆様にありがとう!と御礼申し上げると共に、あの事故で亡くなられた皆様のご冥福をお祈りしています。