劇場公開日 2013年2月8日

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「突っ込み処満載、「なんちゃってヒーロー」というキャラが面白いと思うか、中途半端でもどかしいと思うかで、きっと評価が大きく別れてしまうことでしょう。」ゴーストライダー2 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5突っ込み処満載、「なんちゃってヒーロー」というキャラが面白いと思うか、中途半端でもどかしいと思うかで、きっと評価が大きく別れてしまうことでしょう。

2013年2月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 この人がゴーストライダーをやったら似合うのではないかと思えてしまう、スキンヘッドのブライアン・テイラー監督。アクションシーンには、いつもハイテンションで、マーベルから本作の企画が持ち込まれた時は、もうノリノリで、今までに無いヒーローを撮るんだと雄叫びを上げたとか。その意気込みはいいのだけど、月夜の晩には狼男みたいに突然変身してコントロールできなくなってしまうほど、ぶっ飛んでしまわないか心配になってきます。
 『アドレナリン』を見た人なら解るでしょうけれど、もう強烈な演出過剰で、テイラー監督に容姿が似ているステイサムは、コメディアン寸前のケレン味たっぷりな演技を見せ付けるのです。
 とにかくクランクインするとアドレナリン出まくりのテイラー監督のアクションは豪快で、一切妥協無く、爆破シーンも肉弾戦で進めるため、毎日けが人続出、監督自身も満身創痍で、いい加減恋愛映画に転進した方が楽かもと嘆いている始末。

 だからゴーストライダーが、炎を吹き出しながら疾走し、悪党どもをバッタバッタとなぎ倒すところは、痛快なんです。

 意外なのは、危険の多い撮影なのに、ニコラス・ケイジはなんと監督以上にノリノリで演じていること。今回は変身後の姿も自身が演じて(前作ではスタントマンが扮していた)、キレまくる“怪演”を披露。合成前の撮影時から、カラーコンタクトとドクロのメイクで“ゴーストライダー”になりきっていたというから驚きですね。

 元来オカルト好きなニコラス・ケイジであるだけに、堕天使の悪魔と契約してしまったゴーストライダーの持つ二面性に惹かれているのではないでしょうか。
 ごく普通のバイク好きな人間であるジョニー。しかし、彼の魂には、憎しみや怒りに呼応して、本人の意思とは関係なく、突然現れる復讐の妖精=ゴーストライダーを宿していたのでした。
 しかもそれを導いた悪魔は、元は天使であり、時にダークサイドでない本来の天使の力もジョニーは、持ち合いたことがラストでわかるようになってくるのです。

 そんな善悪が混然と入り交じった主人公のキャラに惚れ込んだニコラス・ケイジであるだけに、おそらくはダークサイドな自分のこころをいかに封じ込めてコントロールしようとギンギンにもがいているのできないかと察します。
 ライダーを演じることは、ニコラス・ケイジにとって内なる自分の魂との会話でもあるのだと思います。
 その結果、自分がいかに愚かで、人気にうぬぼれた存在であるのかという自戒の思いが、ジョニーの自嘲気味の笑いに込められているのです。

 アメコミのヒーローといえば、颯爽と登場して、格好良く悪人どもをやっつける正義の味方が定番。しかしジョニーは自分を振り返って、ダークサイドにひきづられてしまう自分に、自己嫌悪しているところがアリアリなんですね。まぁ、ひと言でいったら、「俺ってヒーロー、なんちゃって」って蔑んでいるようにも思えます。

 だいたい悪魔に魅入られているのに、一般人は絶対に苦しめないのが不思議なところ。やっていることは、結局悪人の退治になってしまうので、まるで木枯らし紋次郎のような、「結果正義」の存在なんですね。
 そんな悪なのか、正義のヒーローなのか、演じている本人ですら、矛盾を帯びたキャラを楽しんでいるくらいですから、観客はもっと掴み憎いと思います。
 そんな「なんちゃってヒーロー」というキャラが面白いと思うか、中途半端でもどかしいと思うかで、きっと評価が大きく別れてしまうことでしょう。

 その他、ゴーストライダーの不思議なところは、いつも炎に包まれているのに衣装やブーツは燃えないこと。ゴーストライダーに不用意に近づくものは火傷してしまうのに、彼に抱えられた少年は五体満足でいられたことが何とも納得できません。
 アドレナリン噴出のテイラー監督なだけに、ストーリーは随所に穴だらけになっていて、突っ込み処満載です。それでも爆破シーン満載の豪快なアクションには
楽しめることでしょう。

 特に体を腐らせることが出来る悪魔のしもべと、ゴーストライダーとの対決は見応えありました。

流山の小地蔵