「とてもスリリング」黄金を抱いて翔べ 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
とてもスリリング
現代の日本で銀行強奪事件を描こうという心意気が非常に素晴らしいし、またその銀行がけっこう古いというのがリアルで、あり得そうなところを追求している感じが素晴らしかった。
井筒監督作品を最近立て続けに見返したところ、井筒監督の暴力は乱闘かリンチが中心で、不意打ちなどもあり、タイマンは描いていなかった。ほとんどないのではないだろうか。英雄的にケンカの強い人物などは一人もいない。強いとされている人も尋常じゃなく凶暴であったり、どこまでも痛めつける事にためらいがない、凶器を卑怯とも思わない人物として描かれていた。ケンカの強さなんて所詮そんなものだと意図しているように感じた。空手の使い手の強さが、金属バットのヤンキーと同格として描かれている。
そういった意味でのリアリティはこの映画の強盗や殺し合いにも非常に感じる事ができる。日本映画のエンターテイメントは現実感を簡単に手放してしまいがちなのでそこを大切にする井筒監督のセンスは素晴らしいと思った。
妻夫木聡が暗すぎ、浅野忠信が土方っぽすぎなどなど、非常に味のある人物像ながら女性ファンがみたらガッカリしそうなところもよかった。
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