「親子の繋がり…」プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
親子の繋がり…
機内、日本語吹き替えで鑑賞。
劇場や映像・音響効果の良いところで観たら、評価はアップしたと思う。
第1部のバイクの疾走感とか もっと迫力あったのだろうなと思います。
映像美・音響美(というのか?)が半減するので、第1部・第2部は退屈でした。
でも、第1部の主人公ルークの息子ジェイソンが出てくるあたりから、物語ががぜん、深まってくる。もっとこの部分を丁寧に描いてほしかったです。でも第1部・第2部があるから第3部が深みを増してくるのだろうなと思います。
親子ってなんのだろう。
継父と母親に大切にされ愛されて育ち、たぶん本人もそれを自覚しているにも関わらず、実の父を求めずにはいられないジェイソン(自分の父について問うジェイソンに、継父コフィがダースベーダーのまねをして「ルークはお前を生んだだけ、私がお前の父だ」というのをジェイソンが笑って受け止めていることからも二人の関係が悪くないことがわかるっていうか、そういう質問を直接悩みとして継父に問える時点で関係は良いでしょう)。
USAってむごいね。日本人だったら皆同じような皮膚・髪の色をしているから、継父かもと思いつつもゴマかせるのに、黒人の父にヒスパニック系の母、なのに自分は金髪で少なくとも絶対に父には似ていないとなれば血が繋がっていないことはごまかしようがない。そして母は実父のことは教えてくれない。
自分のルーツを否定されることは自分の存在を否定されること。その存在感のなさ、心もとなさ、やりきれなさ。その辺が痛々しいほど伝わってくる。それが一枚の写真・実父と実母が自分を抱いて笑っている写真を見ることで、(強盗はしたけど)殺人は思いとどまり、自分の道を歩み始めるジェイソン。
ジェイソンの父ルークも父を知らないがゆえに刹那的に生きてきた。けれど、血を分けた息子の存在を知ってから狂おしいほどに息子を求め、生き方を変えようとする。コフィに育てられれば息子の幸せは約束されているようなものなのに、自分の存在を確かめる・地につなぐためにもジェイソンに狂おしいほどに何かしてやろうとするルーク(自分は父を知らないからこんなになった。だから息子には父が必要なんだと何度も言う)。
バイク乗りや修理の腕は最高だか、子どもへのサインもまともに書けないルークに残された道は、なんてところもきっちり描かれていて…。
射殺される前、彼はどこに電話していたのだろう。警官に追い詰められ、民家の人を人質にとったり、迫ってくる警官を射殺してもいいのに、彼はそうしなかった…。半ば自殺したようにみえるのは私だけ?
反面、父と暮らして生きてきたもう一人の主人公エイブリー。父の生き方を否定して警官になったはすなのに、結局父の生き方と同じ生き方をしてしまい、結果自分の息子AJはどら息子に。
観終わって、切なくなる映画です。
ジェイソン役のディン・デハーン氏は必見です。これからの期待大★★★。