「その夜の侍」その夜の侍 zboziさんの映画レビュー(感想・評価)
その夜の侍
最後まで見たら「なるほど。そうきたか。」という感じで感心しました。
映画のあらすじは、以下のとおりです。
主人公の中村は、交通事故で妻を失った喪失感と怒りからひき逃げした木島を殺すことだけを目標に生きているだけの日々を過ごしていた。
木島を付け回し「お前を殺して、俺も死ぬ」と毎日手紙を送りつけ、妻の残した最後の留守電を何度も繰り返し聞きながら、糖尿病気味で妻に留守電でも止められていたプリンを食べ続けている。
一方の木島はひき逃げで捕まり、5年服役して出所後、ひき逃げ時に助手席にいた小林の家に転がり込み、思うがままに暮らしていた。職場の同僚に自分の犯罪をバラされたと思えば、灯油を頭からかけて自白させる。SEXがしたいと思えば、道すがら交通整理の女を脅して犯す。
中村の脅迫の手紙に対しては、義弟の青木を呼び出して慰謝料や詫び状を要求し、中村の殺害決行日が近づいても手紙がおさまらないと仲間と山中で殺害を試みる。しかし、青木が恐怖のあまり失禁した尿が自分のズボンにかかるとやる気を無くし、小林に任せて帰ってしまう。
殺害決行の夜、木島は中村の影におびえることが面倒になり、雨の中を家から飛び出し、中村に出て来いという。中村は包丁を手に現れ、真正面から木島に向かい対決する。木島も包丁を持っていて中村を殺そうとするが中村に「殺せ。2人目を殺せば死刑になる」といわれて逃げ腰になる。中村は殺させようとするが、木島は殴りながら逃げ続け、互いにそのまま疲れ果てる。
翌日、中村は留守電を消去する。
あらすじは以上です。
中村は木島に対し、「おまえは本当にただ何となく生きている。」「おまえは何の関係もない。」といっています。
中村は、木島を観察しながら決行日前日に気晴らしホテトル嬢と一夜を過ごします。勃起できない中村を無視してカラオケをしたり、キスをしても何の感情も示さないホテトル嬢にこの仕事を「暇だから」やっていると言われて、泣いているのか笑っているのか、頭を抱えるシーンがありました。
最愛の妻をなくした喪失感と怒りで狂った自分を抑えられず苦しんできた。それに比べて、その犯人やホテトル嬢は何も考えずに何となく生きている。何でこんなに自分は苦しんでいるんだと虚しくなったように感じました。
狂気の種類が違いますが、佐世保女子高生殺害の事件や先日の名古屋大学女子大生の事件の犯人とダブってしまいました。
あと、こんな中身のない木島に寄り添う人々がいました。
先日まで私の近くにも、中身のないペラッペラの人間を信奉する人々がいました。
危険が日常に潜んでいると感じた映画です。