劇場公開日 2012年10月20日

  • 予告編を見る

希望の国のレビュー・感想・評価

全21件中、21~21件目を表示

5.0現代の神話

2012年10月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

この映画は「脱原発」の映画ではない。

目に見えない、得体の知れないもの。
それでいて、巨大で、邪悪な力。

そんなものが現実に現れたら、そんな現代の恐怖とどう対峙するのか?
初老夫婦やその息子夫婦、若い恋人たちと3つの形を描き出す。

最後まで、ぶれなかった初老夫婦が素晴らしい。
静かなる愛情と、弾けるような熱い愛情が二人を包む。
夫役の夏八木勲が見事に、真のパターナリズムを演じきった。
最後の場面などは、クリント・イーストウッドと2重写しになった。

認知症の妻役の大谷直子も素敵だった。
「とうちゃん、帰ろうよ」が口ぐせ。
そして、帰っていった場所でのだんなと二人きりの盆踊り。
なんて幸せな場面なんだろう。

身ごもった若い妻は、放射能恐怖症に。
でも、二人の赤ちゃんのためならなんだってするという彼女を、
誰が非難できる?
そんな確信の前では頼りない夫は、迷いながらも従っていく。

若い恋人たちも、普通だったらこんなにカッコよくはなれないはずだ。
彼女の両親を探していく過程で、感極まって言う。
「戻るんじゃなくて作り上げていこう。俺と結婚しよう」と。

共通の敵が存在すると、二人の関係・愛情は強まる。
逆説的だけどそれは本当だろう。
それが永遠に続くことはないだろうが・・・
(永遠にしてのが老夫婦かもしれない)

現代の神話といった評論家がいたが、いま、それを超える言葉を知らない。

園子温監督は、この「希望の国」で、
原発の是非を超えた現代の神話を描き出したと言えるだろう。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
xtc4241