「森に向かう車のシーンがすごい」ブリスフリー・ユアーズ ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
森に向かう車のシーンがすごい
前半は、ミャンマー人の不法移民の男性とその恋人の都市での日常を見せ、後半は一転して、森の中で2人の奇妙で開放的な戯れを描いている。2つの話をブリッジする車での移動シーンがすごい。どこに連れて行かれるのだろうというと眺めていると、道路を外れて道なき道を進み、車は森に向かう。規制のレール(舗装された道路)を外れて、社会の外にある大自然で2人は開放的になる。不法移民の立場で仕事をするために健康診断を書いてもらわねばならない、男の健康診断に付き添い、仕事に遅刻した恋人は職場で怒られる。都市での社会生活はいろいろ面倒くさい、社会の外にある森にはそんな煩わしいものが何もない。誰もがただの獣である。
アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の映画にはよく森が出てくる。森は人間社会のルールの通用しない世界として描かれる。そういう場所に、人は時々でもいいから訪れるべきなのだろう。人間社会の些事など取るに足らないものに過ぎないんだと生きる力をもらえるから。
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