劇場公開日 2012年1月30日

ブリスフリー・ユアーズのレビュー・感想・評価

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5.0森に向かう車のシーンがすごい

2019年11月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

前半は、ミャンマー人の不法移民の男性とその恋人の都市での日常を見せ、後半は一転して、森の中で2人の奇妙で開放的な戯れを描いている。2つの話をブリッジする車での移動シーンがすごい。どこに連れて行かれるのだろうというと眺めていると、道路を外れて道なき道を進み、車は森に向かう。規制のレール(舗装された道路)を外れて、社会の外にある大自然で2人は開放的になる。不法移民の立場で仕事をするために健康診断を書いてもらわねばならない、男の健康診断に付き添い、仕事に遅刻した恋人は職場で怒られる。都市での社会生活はいろいろ面倒くさい、社会の外にある森にはそんな煩わしいものが何もない。誰もがただの獣である。
アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の映画にはよく森が出てくる。森は人間社会のルールの通用しない世界として描かれる。そういう場所に、人は時々でもいいから訪れるべきなのだろう。人間社会の些事など取るに足らないものに過ぎないんだと生きる力をもらえるから。

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杉本穂高

3.0実験的作品

2020年7月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 凄い!オープニング・タイトルが上映開始1時間のところで登場する(当時はまだ珍しかった)。一瞬、これで終わったのじゃないかと錯覚してしまった。

 これだけでも初めて見る実験的映画。しかも前半はかなり緩い展開であり、ちょっとした人物紹介と、延々と目的地に向けて車を運転するだけなのです。そのクレジット・ロールがとりあえず終わった後は、森林浴を味わえるほど自然たっぷりのエロチックドラマ。

 演じるのはミャンマーからの不法就労青年ミンと仲のよい若い女性ルーン。そこへ同じく彼に好意をよせている中年女性オーンが登場する。オーンは同じく森の中で不倫中、男が突如いなくなり、彼を探すうちに二人のラブラブ場面に遭遇するといったストーリー。登場人物は全て素人なのが驚きであり、ハードコア顔負けの演技だったのだ・・・しかも、青年ミンの性器がおもむろに大写しになって・・・

 ミンはタイの言葉を読み書きできなく、周りから“バカと思われてる”などといった設定も、実はミャンマーから逃げてきたという事実。不倫カップルの男性が国境付近でミャンマー難民であるカレン族によって殺されたという両国における社会問題をも表現していたのだが、それを意識させないほど見入ってしまうシーンの連続だった。

 とにかく長まわしカットが多く、登場人物の息吹までも感じ取れてしまう。ハエの羽音もうるさいくらいで、気持ち良さそうに寝転んでいるルーンの顔にも自然にハエがとまっていた。川で水浴びする女性二人のシーンと性器シーンのおかげで忘れられない映画になりそうだ・・・

【2005年11月金沢コミュニティ映画祭にて】

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kossy