劇場公開日 1973年12月29日

「いまだ通用する傑作」日本沈没(1973) N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0いまだ通用する傑作

2021年11月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ロケが豪華。ミニチュア駆使で深海から空まで、大自然から各種乗り物までとものすごいスケール。
今の普通の映画なら負け確定ではなかろうか。
それらの描く未曾有の災害はもはや地球と日本民族の戦争だ。
もちろん負け戦ならどう受け入れ処理するのか。
難民となった日本人をどう救済するのか、政府の奔走など迫真である。
中でも、なんもせんと沈むのがいい、
という識者案を前に涙ぐむ丹波さん首相の名演技にぐっときてしまった。
(本作、政府の動きが本当に理想的なのである。同じニオイを感じるシン・ゴジもここが元ネタなのか)

最初の噴火は噴火というより発破で、
東京大地震のシーンの爆発っぷりに崩れっぷりっもゴジラ出てきそうだけど、
災害で逃げ惑う人々の描写は関東大震災や戦時中がベースか。
近しい当時ならではな描写には、今、見られない細かなディテールがある。

また物語の大きな特色として、人と人が尊重、信頼する関係ベースであることも、今には見られない特徴だと感じた。意見の相違はあれども、裏切りや対立は起きないのだ。まあ沈没日本と対立するだけで精一杯というのもあるが。
対立せず、欺き、欺かれることもなく、
だからこそ、それぞれがそれぞれの考えを深め歩んでゆける
という登場人物たちの描き方には文学性すら感じる深みがあった。

これが50年前の作品かと思えば、科学的検証も含め本当にすごい。
なにしろ今見ても嘘八百、滑稽とは笑い飛ばせないのだから。

N.river