ファイナル・ジャッジメント(2012)のレビュー・感想・評価
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もっと映画技巧的な面で脚本の練り上げやカット割りなどで研鑽を積み上げる必要あり
いま中国は軍事大国化し堂々と尖閣列島の領有を宣言しています。このままだと自衛隊との武力衝突も起こりうる事態となって、日本の国土を守る気概が試されることになるでしょう。たかが島一つと思われる人もいるかもしれません。けれども尖閣で善処するといって中国の実効支配を認めたなら、そのまま坂道を転がるように沖縄が独立し中国の属国となり、日本全土の制海権がなし崩し的に中国海軍の支配下に組み込まれて、最後には本作のように東京の上空に中国の戦闘機が舞う事態となっていくのは時間の問題だと思います。
だけどそんな危機感を今の国民の殆どは感じていないのが現状ではないでしょうか。本作の主人公の正悟は、直感でオウラン国の侵略の危機を感じ、友人等と未来維新党を立党。2009年の総選挙に打って出るものの、街頭で誰も正悟の演説に耳を貸そうとせず、敗北。ただ未来維新党が若いふたりとその友だち程度で結党された政党というよりも大学サークルに近いのりの素人政党で、頼りなさを感じてしまいました。
もう少し、いまの“維新”並みに国政にも影響を及ぼす勢いある維新政党なのに、オウランが攻めてくると主張したために全国で敗北してしまったという設定のほうが、説得力が出てきたと思います。
国民はまさか中国が日本を占領するなど冗談とか思っていないでしょう。けれども相手はハイエナのように、軍事的に弱いと思われたらその本性を発揮してきて、すぐに恫喝してくるでしょう。本作では正悟の父親でもある鷲尾哲山が盟友の中岸雄二郎と共に創立した民友党によって、政権交代した途端オウラン国に侵略されてしまいます。鷲尾哲山は、学生運動上がりの左派政治家でした。彼の影響下で民友党は、憲法九条の理念に基づいて日米安保条約の見直しを強硬したとたん、オウラン国が侵略したのでした。これは現状でもすぐに起こりうることなのです。ただ残念なことに、本作は肝心の民友党政権がオウラン国の軍事恫喝に屈し、オウラン国の極東省となる過程を、ナレーションで済ませてしまいました。しかし、今の政情で国民もっと近未来に起こりうることを感じて欲しいのなら、この部分こそもっと丁寧に描くべきだったと思います。
占領完了後、国内の宗教のことごとくは弾圧されて閉鎖。宗教弾圧シーンで、お地蔵さまがショベルカーに踏みつけられて破壊されるシーンには、頭にきました。例え映画でもお地蔵さまを壊すと不謹慎過ぎます!
そんな状況を生み出す原因を哲山と生み出してしまった中岸雄二郎は、責任を痛感。自宅に信仰者を匿うようになります。併せて世界中からアンチオウラン国の情報を収集し交流するセンターを設置。オウラン国に支配された日本を解放するチャンスを伺うのでした。そんな雄二郎が宗教になぜ開眼したのか。そのきっかけを息子の憲三に語る内容に思わず納得させられました。票が欲しくて近づいたのだと。雄二郎を演じている田村亮は燻し銀の名演技を連発。ホントいい芝居していましたね。
集まってきた各宗の信者たちは信仰を守るネットワーク“ROLE"を結成し、オウラン国の宗教弾圧と対峙するようになります。“ROLE"という組織は、南無の会のように一宗一派に偏らず、各宗教が平等の立場で参加しているネットワークなんだというところが興味深かったです。
それにしても夜間外出禁止令の中“ROLE"のメンバーがオウラン軍兵に変装して自由に歩き回っている姿や、“ROLE"本部がなかなか発覚しないのには、それはあり得ないだろうと思いました。
本作のメインストーリーは、この“ROLE"に悟りを開いた正悟がリーダーとなって、日本人を鼓舞する歴史的な渋谷での街頭演説に挑むというもの。
正悟目線で語るべきなのに、時々途切れてしまうから、正悟のこころの変化が途中分かりづらくなってしまいました。前半の選挙に負けて放浪するところはよかったのですが、後半詰まってきたせいか、正悟が悟りを開いていく過程がやや駆け足となりシナリオの荒さを感じました。
だけどキャラとしての正悟はとても魅力的。放浪中の存在感のなさときたら、等身大の青年像を好演していると思います。そして大悟したのちの説法する姿には、暖かみが感じられて、こんなリーダーなら人々が付き従い、世の中を変えていくのかもというカリスマ性を感じました。
ただ正悟に寄り添うヒロイン格のリンの心の動きと隠し持っている秘密には、唖然。
純情な彼女には、嘘をついたり、二重スパイのような真似はできないはずなんですけどね(^^ゞまぁ、りんの設定も何か仕掛けたいと焦る脚本家の陥りやすい計らい心だと思います。
最大の突っ込みどころは、最後の渋谷での街頭演説。オウラン軍が集結している中をいともあっさりすり抜けて、演説を実現してしまうのですね。その間オウラン兵は棒立ち状態。そんな兵隊の独裁国家では即刻銃殺ですよ。さらに、正悟の説法を聞いている兵までが勝手に銃を降ろしてしまうのも疑問。だってそんなに甘くはないでしょう。奇蹟現象が起こるとか何かないと一般の観客には納得してもらえないと思います。また長い演説シーンは、幸福の科学作品の毎回のお約束ながら、一般の人に感情移入してもらうためには、長回しするよりもカット割りを細かくしてもっと工夫が絶対に必要です。
民主化のうねりでオウランが瓦解していくラストがはしょくられて、ナレーションで片付けられてしまったのもとても残念に感じました。
作品のコンセプトにはとても共感します。ただもっと映画技巧的な面で脚本の練り上げやカット割りなどで研鑽を積み上げて、もっとエンターテインメント性を経験的に積み上げる必要があると感じました。
頑張ったなー
幸福の科学の映画、毎回楽しみにしています。今回は「~法」ではなく、「ファイナル・ジャッジメント」ときましたか。個人的には、そこそこ楽しめました。久々の実写映画、「頑張ったなー」という感じです。昨今幸福の科学がはじめた、スター養成部の子たちの活躍も初々しいですw
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