「教師と聴覚に障害のある生徒が虐待に立ち向かった勇気を讃えたい。」トガニ 幼き瞳の告発 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
教師と聴覚に障害のある生徒が虐待に立ち向かった勇気を讃えたい。
目を背けたくなる程、過酷で壮絶な社会問題を描いた映画
韓国の光州にある聴覚障害者の学校で実際に起きた職員による
性的虐待事件を基にした小説の映画化作品。
聴覚に障害があるために、校長や同僚そして警察官までから
女子生徒たち、更に男子生徒たちまでが、恐ろしい虐待を受けていた。
たまたまその学園に赴任した美術教師のカン・イノ(コン・ユ)。
寮の指導教員が女子生徒に体罰を加えている現場を目撃する。
更に校長や複数の教員から生徒たちが性的虐待を受けていることを知り、
警察に通報、子供たちの聞き取りで事件の全貌が白日にさらされ、
子どもたちは法廷に立つことになる。
しかし弁護士や判事、そして検事にまで、金銭や人事での
介入そして被害者の保護者への示談の働きかけがあり、
判決は告発された3人とも執行猶予がつく事実上骨抜きにされ、
闇に葬られそうになる。
しかし虐待による轢死事故で弟を亡くしたミンスは、虐待した教師を
刺して線路に追いつめ、ミンスと教師ともどもが轢死する・・・
という悲劇が起きてしまう。
映画はデモをするイノ(コン・ユ)が、機動隊の水の放水を浴びて
ずぶ濡れになりながら、ミンスの遺影を胸に、
「この子は、聞くことも、話すことも出来ません。
「ミンスと言います、
「聞くことも話すことも出来ません、
「どうかミンスを忘れないで・・・」
イノは機動隊に頭を踏むつけられ地べたに這いつくばりながら、
訴える。
映画は社会現象になり「トガニ法」という虐待を取り締まる新法が
制定された。
そして校長などに実際に実刑が言い渡されたそうである。
日本でも教員の生徒への性加害が何十年前から行われたており、
被害者が幼かったり告発には精神的苦痛を受けるため、
告発は現実にはとてもハードルが高い。
告発された教員は依願退職により事件告発から逃げたり、
教育委員会が結果的には加害教員を庇い隠蔽する。
複雑な利害が絡み一筋縄では行かない。
その点この「トガニ幼い瞳の告発」は、真っ直ぐに真摯に向き合う
韓国の国民性が事件を単純化して解決に導いたと思う。
辛くともあらゆる虐待を見過ごしは行けない。
日本こそ教育現場は、虐待を隠蔽してはならない。