「神は細部に宿る」パシフィック・リム arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
神は細部に宿る
ゴジラにもガンダムにもエヴァンゲリオンにも全く何の思い入れもないので、いくら話題作とはいえ正直全く期待していなかった。
確かにこれを人間ドラマとして見ると、イエーガーパイロット達のキャラクターも彼等のキャラクターの背景、抱えるトラウマも何処かで見たり読んだりしたような想定の範囲内で、特に魅力的だとも思えない。
むしろ、キャラクターとして面白かったのは、マッド・サイエンティストっぽい博士のコンビや香港の闇商人ハンニバル・チャウ(演じるのは『ヘルボーイ』のロン・パールマン)だった。
しかし、ドラマとしての弱さを補って余りあるのが、その圧倒的なビジュアル世界だ。
ギレルモ・デル・トロは人間よりも怪獣やイエーガーの方に興味がある、好きだということは明白(!)だが、こと怪獣とイエーガーを見せるということにおいては偏執狂的とも言えるような緻密さを感じさせる。
二人のパイロットがイエーガーと一心同体となる怪獣との闘いは正に“格闘”だし、最新のVFX技術を使いながらも怪獣のビジュアルにはどことなく懐かしさも感じる。
また、海底の時空の裂け目から怪獣が地球を襲うという世界観の序盤での説明もすんなりその世界に観客を惹き込む。
しかし、圧巻はやはり香港での戦闘シーンになるだろうか。
あのシークエンスだけでも、公開時に劇場に何度も足を運んだ人がいたというのも納得の圧倒的迫力だった。
何が凄いか?
それは画面に映らない、語られないところまで徹底的に設定された世界観、細かいところまで一切の手抜きなしで作りこまれたビジュアル世界だ。
プリ・プロダクション、ポスト・プロダクションの作業を想像するだけで気が遠くなってくる。
正に“神は細部に宿る”。
緻密で地道な作業が観客を圧倒する一本。