「出力全開!頑張れイエーガー!」パシフィック・リム tochiroさんの映画レビュー(感想・評価)
出力全開!頑張れイエーガー!
最初にこの作品の情報を知った時は、「本当に巨大ロボと怪獣との戦いをきちんと描けるのか?」と正直期待と不安が半々だった。
しかし実際に観てみるとそれは全くの杞憂だった。実によくできていて面白い。
複数の敵と地球防衛軍との戦いという面では「ゴジラファイナルウォーズ」での怪獣対各戦闘艦との戦いや、「ゲッターロボ號」(漫画版)のアラスカ戦線におけるランドウ軍対各国ロボ軍団との戦いが思い浮かぶが、この作品のパワーはそれらから予想されるものをはるかに上回っている。
イエーガーの操縦者が2名というのは、ドラマを作りやすくする手法かもしれないが、そのためのドリフトがガイズラーとゴットリーブ両博士が怪獣の脳を通じて、真の敵と反撃への手がかりを掴む重要な役目を果たしているので、これは巧妙で必要な設定だと言える。
その他のキャラクター描写にしても、それぞれに必要な存在感を醸し出していて、好感が持てる(私の好みは二人の科学者コンビだが)。
太平洋の海底の割れ目から出現する怪獣と聞けば当然地球産の生物だと思うが、実はこの割れ目は異世界(アンティバース)との通路であって、怪獣はその通路を通ってやってくる非地球産の生物であり、しかもその外観(カテゴリー)は異なってもすべて同じDNAを持つクローン体であることがわかる。真の敵はクローン培養した怪獣を、異次元通路を構築して送り込み、人類の殲滅と地球資源の略奪を企む知的生命体(プリカーサー)ということで、予告編からは全く予想できない展開を見せる。
かくて対怪獣戦から異次元通路の破壊という作戦に軸足を移して、ラストの戦いが繰り広げられるのだが、このラストも「お約束」の展開ではあるが十分に満足できる内容である。
ただ異次元通路は破壊されたが敵自体は存在している(と思う)。この先異次元通路を再構築しない保証はない。また人類がDNAを解読できた以上怪獣をクローン培養することも可能であろう。
もし続編が作られるとすれば、クローン培養された怪獣に強化装甲や武器を装着し、操縦者が怪獣の脳とドリフトして戦うという展開も考えられる。 ギレルモ監督の構想にはそんなものはないのかも知れないが、一度観てみたい気もする。
なお、ラストのレイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎への献辞にも感じるところがあったが、できれば円谷英二の名前も入れて欲しかったと思うのは、特撮ファンの身勝手というものだろうか。