劇場公開日 2013年12月13日

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「希望とは違ったが。」ゼロ・グラビティ xtc4241さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5希望とは違ったが。

2013年12月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

船外活動のとき、見える地球の美しさに目を奪われてしまう。
成層圏になかに存在する奇跡のような星とそのはかなさ。
真っ暗闇のなかに浮かんでいる地球。
それを見るとき、人は神の目になる。
その経験がその後の彼・彼女の人生に大きな影響を与えるという。
立花隆の「宇宙からの帰還」にはそんなことが書かれていた。
だから、僕も期待していたのだが・・・

そんな映画ではなかった。
監督も言っているように「この映画は哲学的な要素はない。
ただ、ジェットコースターのようなスペースエンターテイメントである」
そうなんだ。そういう目で見るべき映画だと割り切るなら、
非常によく出来た映画である。
いままでにない映像表現がたくさんある。

まず、第一に映画というものをよく考えた作品だということ。
映画館は、自分の視界すべてがその映像だけが見える。
音響も他のものは完全にシャットアウトしている。
大きいのが館内が真っ暗闇だということ。
そう、宇宙の世界に実にマッチしている空間なのだ。
だから、テレビでは絶対に味あうことができない空間。
DVDで見たとしても全く違う作品になってしまうだろう。
それに3Dであること。
3Dの欠点は、現実世界のなかの人間を薄っぺらくしてしまう
のだが、宇宙空間の非現実世界にはとてもマッチしているのだ。

それによかったのが、ふたりの会話だろう。
とくにジョージ・クルーニー演じるベテランの宇宙飛行士。
極限状態にあっても、ユーモアを忘れない。
「僕に近づいたときドキッとしなかった?あまりにきれいなブルーアイに」
「そうね。すてきだったわ、そのブルーアイ」
「そうだろう、でも本当は茶色なんだけどね」
そんな大人の会話が、サンドラ・ブロック演じる宇宙博士を、そして、観客を和ませる。

そして、その女性博士、サンドラ・ブロック。
いろんな女優がこの役をしたがったようだ。
例えば、アンジェリーナ・ジョリーやナタリー・ポートマン、
スカーレット・ヨハンセン。
ジョリーが演じたとしたら、もっとセクシーになるだろう。
ポートマンたちなら、その若さ故の未成熟さが際立ったのだはないか。
それはそれで面白いかも知れない。
でも、その息づかいだけで、僕らを緊張させたり、
ほっとさせたりするサンドラ・ブロックの演技は素晴らしかったと思う。

xtc4241