「宇宙がファンタジーでは無くなる。」ゼロ・グラビティ ハンペン男さんの映画レビュー(感想・評価)
宇宙がファンタジーでは無くなる。
この作品は今までの宇宙をモチーフとした映画とは一線を画する。それは宇宙の未知な部分を一切描いてないからだ。宇宙というものは未知であり、そこにロマンを抱くというものがこれまでの宇宙映画の定説だったが、この映画には宇宙人や未確認飛行物体、未確認生物などは全く出てこない。徹底して今、その時、その場所で起こっている出来事をドキュメンタリー調で坦々と描いていくのだ。
しかし、なぜそういったエンターテイメントとはかけ離れているような作風がこれほど世界各地でバカ売れし、アカデミー賞最有力とまで言われているのか?この理由の一つとして忠実で繊細な宇宙描写があげられるだろう。3Dの立体感と奥行き、映画館の暗闇も相まって観客はまさしく“ゼロ・グラビティ”を体感しているような状態に陥り、その状態で次々と襲ってくる「出来事」を目の当たりにすることで、もう我々は興奮せざるを得ないのである。また、それと同時に宇宙で人間はあまりに無力である事を思い知らされ、逆説的に宇宙は未知である事を感じるのである。
評判が大き過ぎるのは否めないが宇宙映画の新たなジャンルを確立したのは間違いないだろう。
コメントする