劇場公開日 2012年6月16日

「予想を超える骨太の作品」図書館戦争 革命のつばさ tochiroさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5予想を超える骨太の作品

2012年6月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

知的

 原作は読んでおらず、TVアニメも全話観ていない「もどきファン」の私だが、何故か仕事がいつもより早く終わったこともあって、衝動的に観に行った。

 結論を言うと「観てよかった、予想以上に面白い」であった。

 活字本が禁止された世界を描く作品には、映画化もされたレイ・ブラッドベリの「華氏451度」があるが、それがあらゆる本の存在を許さず徹底的に焼却してしまい、人々はわずかに口語伝承で本の内容を保存する世界を描いているのに対して、この作品の世界では全面禁止ではなく、多くの人々はそれほど思想統制に対して危機感を持っていないように見える。

 活字中毒を自認する私から見れば、図書が誰にとって有害かどうか分からない基準で検閲される世界など耐えられないが、活字離れをしている人から見れば「別にどうでもいい事」なのかもしれない。しかし東京都の「非実在青少年」の例を見るように、いつそれがどんな形で牙を剥いてくるか分かったものではない。

 ストーリーはTVアニメの延長線上に、うまくキャラを立て、様々なエピソードをはめ込み、ご都合主義を感じさせず進んでいく(ただ児島さんはいい人過ぎるように思うが)。
 前線での戦いの描写のみに陥らず、戦いの主眼を問題の根幹たる「メディア良化法」の存在を正面から問い直す方向に持っていくのも納得できる展開だ。

 この作品の影の主役とも言うべき当麻蔵人の、当初の日和見の事なかれ主義から、次第に自分も含めての書く権利、読む権利へ目覚めていく姿こそ、この作品の制作スタッフの主張であり、願いであるような気がする。表面上のギャグや男女関係のベタな描写の奥に、骨太な思想をみるのは私のうがち過ぎだろうか。

 もし観ようかどうか迷っている人がいるなら、「是非観てください」と自信を持って勧めたい。

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tochiro