「全ての終わりに愛があるなら」シン・エヴァンゲリオン劇場版 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
全ての終わりに愛があるなら
"ヱヴァンゲリヲン新劇場版" 四部作完結編。
シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバースの一編。
通常スクリーンで鑑賞(3.0+1.0)。
庵野秀明はすごい仕事を成し遂げた…
本作を見終わって、真っ先にそう感じました。
本当に、お疲れ様でした。そして、ありがとう。
「さらば、全てのエヴァンゲリオン。」と云うキャッチコピーが意味するものは何か?―物語をどのような結末へと導くのか?―まさかここまでのものが用意されていたとは。
これほどまでに完璧な完結…。ストーリー自体の完結だけでなく、庵野監督自身の長い長い仕事にケリをつけると同時に、ファンの存在に感謝を込めつつ、エヴァから卒業させようとするなんて…。なんと壮大な卒業式だろうか。
先行公開されていたアバンタイトル+数10秒の先には予想もしていなかった世界が広がっており、「Q」以降気になっていたことが明かされて安堵すると共に、劇中で経過した時間と人間関係の変化に改めて気づかされることに…
前作では周囲から終始突き放されていた感のあったシンジですが、本作では一転、一部を除いて、殆どのキャラが彼の心を回復させようとする優しさを見せてくれました。ある人物に至っては、前作での言動に「実はこう云う想いがあったんだよ」と云う説明が成され、めちゃくちゃ安堵しました。
そして、物語はいよいよヴィレとネルフの最終決戦へ…。両者の願いが交錯し、激烈の総力戦が展開されました。前半少々ダレ気味だっただけに、バトルシーンは胸アツの極みでした。ゲンドウの目的、ミサトの想い、シンジの願いの行方と、これまでの「エヴァンゲリオン」を総括し昇華させようとする庵野秀明の試みに目を見張り、心奪われました。
クライマックスにおいて、キャラクターたちが救済され、その役割から解放され、ステージから退場しました。否応無しに気づかされました。エヴァの呪縛とは、ストーリーにおける設定と云うだけでなく、「エヴァンゲリオン」を求め続けたファンによる呪縛でもあったんだな、と…
今回の四部作において、時間軸がループしているのではないかと云う説がありました。「ひぐらしのなく頃に」みたいに、最良の結末を得られるまで、ひたすら同じ時間を繰り返していく。これは即ち、ファンがテレビシリーズ第壱話から順番に観始めて第弐拾五話まで見終わると、また第壱話から観始める行為を表していたんじゃないかな、と…。今回、物語はこれまででいちばん良い結末を迎えました。ループはもう終わりにしようと、庵野秀明が言っているように思えました。
つまりファンもシンジやアスカみたいにエヴァの呪縛に囚われていて、庵野はそこからファンを救済しようとしたのかもしれないな、と…。エヴァばかりじゃなくて、他のことにも目を向けよう。同じものばかり見るんじゃなくて、新しい道に踏み出そう。そう云うメッセージを送りたかったのではないかなと思いました。時間が進み、声変わりして大人になったシンジくんが、レイでもアスカでもなく、マリとの恋に進んだように。手を繋いで階段を駆け上がり、まるで何かから解放されたかのように駅の出口から飛び出したみたいに。
前を向いて、進んで行こう。
なんてポジティブなメッセージでしょうか。
どちらかと言うと、「エヴァンゲリオン」にはネガティブな雰囲気が付き纏っているイメージでしたが、本作ではそれが一転し、めちゃくちゃ前向きな方向性を示していました。
これまでの伏線を回収して、謎に丁寧な解を与えてくれただけでなく、「Q」で奈落の底へ突き落とされたシンジを優しく包み込んで成長を促し、父親との最終決戦へ赴かせました。
全てに等しく赦しと救いをもたらす…。つまり愛のなせる業以外の何物でも無いなと思いました。
新たな日々が始まる。
それは「エヴァンゲリオン」の無い世界。
いい意味で、「エヴァンゲリオン」がいらない世界。
最後に。
本当にありがとう。そして、さよなら。
※以降の鑑賞記録
2021/08/14:Amazon Prime Video(3.0+1.01)