「面白かった、が…」シン・エヴァンゲリオン劇場版 In_NaNaChismさんの映画レビュー(感想・評価)
面白かった、が…
漫画版を子供の頃に見て、三年くらい前に新劇場版を見てハマり、テレビ版、旧劇場版という順番で見てシン・エヴァを鑑賞しに行ったオタク。
率直にいうと面白かったがモヤモヤが残ってしまうという非常に悔しい結果だった。多分僕は庵野秀明が好きだったわけでは無くて、エヴァンゲリオン新劇場版という“新シリーズ”が好きだったんだと思う。だからこそ作品後半の序破急とは一線を画すような彼のエッセイじみた作風を素直に受け入れることができなくて(「まごころを君に」が刺さらなかった自分としては)、心の中では本予告で醸し出されていたシリアスな雰囲気を求めてしまっていたのも大きな要因なのだろう。もちろん本予告のシンジ君のセリフや、“3.0+1.0”というようなナンバリングからシン・エヴァンゲリオンがこれまでのエヴァンゲリオンの集大成とも言える作品となることは想像ができたのだが、それでも自分の理想としていたシン・エヴァと実際に映画館で観たシン・エヴァが乖離してしまっていた事実を、映画を観た当日には受け入れることが出来なかった。結局自分は王道でありながらも心を抉られるようなストーリー展開、複雑な設定、奇抜な世界観を持つエヴァンゲリオンが好きな浅いオタクだったのかもしれない。もちろん、作品自体は十分に楽しむことができた。特に第3村のシークエンスはQの絶望的な状況とは一転して、まるでこれまでのシリーズに出てきた中学生パートのような穏やかな生活を見ることができて救われたし、ヴンダーの本来の運用方法やゲンドウの目指す新劇場版での補完計画の内容(ヘヴンズフィールかな?)が明らかになった所などは本当男の子心をくすぐられた。マリendのラストに関しても個人的には納得がいった。“新”劇場版である以上は、今までのシリーズには登場しなかったヒロインがシンジを救って恋仲になるという展開はありえたとは思うし、とりあえずはシンジ君が誰とも結ばれないエンドにはならなくて良かったんじゃないかな(ヒロインを絞め殺そうとしなくて本当に良かった…)。ただ、やっぱり本予告を見てすごく期待していた初号機と十三号機のバトルが半ばお笑いのような形で進行していたのが個人的には残念だった(まあこれが認められないのは結局は自分のエゴのせいなんだけど)し、登場人物がこれまでの名台詞を次々と言っていくのは正直あざとく感じて苦手だった(ポカ波、「ゲンドウ君の狙いはこれか!」「始めよう冬月」等々)。後は首無しエヴァが綾波の体に変わっていったり、ゲンドウがテレポート遊びをしたりするシーンは本当に笑いを堪える程面白かったけど、僕の求めていたエヴァはこれじゃなかったんだよね…。ラスアス2とかトイストーリー4を批判的に見てる人は物語を多面的に見れてないんじゃないかって思ってた。でも僕もその中の一人だったようだ。「さよならはまた会うためのおまじない」と作中では言ってたけど、多分もう庵野監督の新作エヴァを見るのは難しいだろうから本当に悲しい。そして、制作陣には「これまでエヴァンゲリオンという作品を作ってくれてありがとう。」と感謝の意を伝えたい。自分のエゴのせいで評価を3.5にしてしまったが、「虚構と現実」という全ての作品が必ず有するテーマについてここまで深く取り組んだシン・エヴァンゲリオンは本当にすごい作品だと思うし、二回目も絶対見に行くだろう。ありがとう庵野監督。
後、僕は三人の中では綾波派で、一番好きなのは鈴原サクラです。