「「ミュージック・ボックス」的映画では無かったが」ある秘密 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
「ミュージック・ボックス」的映画では無かったが
たくさんの関連映画を観てきた者として、
図書館で見たDVDパッケージが
ユダヤ人強制収容所物とのことだったので
レンタルして鑑賞。
“ある秘密”とは何か?
コスタ=ガヴラス監督の
「ミュージック・ボックス」が頭を過り、
よもや、主役の夫婦のそれぞれの元伴侶が
ユダヤ人で、彼らを告発しての
再婚を秘密とした作品かと勝手に思ったが
違った展開だった。
話はどちらかと言うと、
ユダヤ人や強制収容所要因による秘密と
言った観点ではなく、時代的要因を超えた
男女の愛憎による秘密であり悲劇だった。
敬虔なユダヤ教徒が、この時代に
精神的に不安定な状態だったとは言え、
前妻がユダヤ人パスポートを出したのは
自殺の意思に近いものだったろう。
確かにこのまま夫のいる疎開地に行ったと
しても幸福が待ってはいないことは理解する
が、子供のことを考えたら、
親としては過ち行為以外の何ものでもない。
再婚のスポーツマン夫婦が授かった子供が
虚弱体質だったことは、
結婚しながらも別の異性に想いを強く寄せた
ことに対する神の罰との思いなのだろうか。
監督は原作者の体験から“時代的な”背景を
強く滲ませたかったのだとは思うが、
私には普遍的な夫婦間の愛憎劇が
強く出過ぎてしまい
“時代性”が薄まってしまった感の作品
に思えた。
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