「何を罰し何を救うか。」臨場 劇場版 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
何を罰し何を救うか。
残念ながらドラマ版は見ていなかった。
なのでキャストそれぞれの立ち位置も、今作を観ながら。
特に説明もなく、段々と片づけられていく主人公・倉石の
自宅が、冒頭の映像の意味を物語り始める。
なるほど、もう死期が近いんだな…この人は。と。
それにしてもかなり凄惨なシーンが展開されるのが特徴。
幾らドラマだ、映画だ、と思ってはいても、
今回と同じような無差別殺人事件が後を絶たない最近の
世の中のニュースを、顔を背けたくなるほどの臨場感で
延々と見せつけてくる。実際に被害に遭われた方だったら、
この映像をどう感じるのだろう。ただ、理不尽な死に方を
余儀なくされた多くの犠牲者には言葉もないという事件だ。
娘を失った母親(若村麻由美)は未だにその街を徘徊する。
なぜ娘がその時、その街にいたのかすら分からない。
こんな酷い仕打ちを受けたうえ、犯人が心神喪失無罪では
どんな遺族とて犯人をぶっ殺したくなるというのは当然だ。
2年後に起きた、当時の関係者に対する連続殺人事件の
巧妙な手口に、警察の見解に対し異を唱えるのが今回の
倉石の下した検視となるわけだが…。
何しろドラマを観ていなかったので(原作も知らず^^;)
この倉石率いるチームの役割と、警視庁の内部事情など、
観ていて分からない点も多く、おそらくこれは…こうだろうと
何となしに納得しつつ、観進めていった。
しかしその、分からない中でも際立つのがキャスト其々の
演技と説得力だった。分からなくても面白い。惹き込まれる。
ドラマ時代から卓越した演技を見せていたんだろうな~と
思わせる倉石役の内野聖陽に、松下由樹、高嶋政伸、段田安則、
若村麻由美、柄本佑、平田満、長塚京三…とすごい顔ぶれだ。
これで面白くなかったら、相当脚本と演出が悪いことになる^^;
物語の方は…後半かなり突っ込みどころも多い作品だったが、
検視という仕事の綿密な作業と経験による積重ねの理論など、
観ていてまったく飽きなかったし、勉強になった。
それにしてもあのラストの解釈は…どう考えるのが妥当なのか。
あまりに悲しい気がするが、もしまたドラマ化されたなら
見てみたいと思わせてくれる一本だった。観応え、かなりあり。
(内野さん、べらんめぇな役が上手いわねぇ。俺のとは違うなぁ~)