劇場公開日 2013年5月31日

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「カーウァイによる自身へのオマージュか」グランド・マスター よしたださんの映画レビュー(感想・評価)

1.0カーウァイによる自身へのオマージュか

2015年1月20日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

興奮

 ウォン・カーウァイ監督による初めてのカンフー映画。
 表面的にはカンフー映画なのだけれど、物語の本筋はこれまでのカーウァイ作品と同じく愛と邂逅。
 いくつかのシーン、音楽の使い方で、過去のカーウァイの映画をほうふつとさせるものがあった。
 とくに、トニー・レオンが妻の脚をマッサージするシーン。「恋する惑星」でも、彼はフェイ・ウォンのふくらはぎをやさしく揉んでいた。
 そして、チャイナドレスに身を包んだチャン・ツィイーが優雅に歩くシーンとそのBGMは、「花様年華」を思い出させる。また、ツィイーが壁に向かって何かを言っているシーンも、同作でトニー・レオンが木の穴に向かって秘密を語るシーンと重なる。
 カーウァイは、アイデアの枯渇を自覚して、過去の作品からの引用を決め込んだのか。それとも、自作の引用で一本の映画が作れるほどに、自分はもう巨匠、あるいは名匠と呼ぶにふさわしい映画監督なのだという宣言なのか。
 そのどちらにしても、これからも新しいジャンルに挑戦して、カーウァイ風味の作品を撮り続けて欲しい。

佐分 利信