おおかみこどもの雨と雪のレビュー・感想・評価
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「やっぱり細田監督はすばらしい」と再認識した作品
普通に暮らす女子大生が普通に恋をし、身ごもり、母として成長する
母親目線の感動作品
ただ愛した人が狼男だったというところが普通と違う
それによる一人の母の子育て奮闘記を描いたSFドキュメンタリードラマ
ただでさえ大変な育児を、半分おおかみのこどもを抱え、なにも分からずただがむしゃらに生き抜くつよく素敵な母の物語 日本人なら一見の価値あり
細田監督の素晴らしいところは、明らかに突飛な内容なのに、
そこにはなにか懐かしいような、日本人の心のどこかにしまわれてる気持ちを引き出し、そこはかとないほっこりとした温かい感動を芽吹かせる
天才だというとこだと思う
日本の自然、田舎の風景、古き良き日本を愛する監督の気持ちが伝わってくる
その上今作は、一人の女性が恋をし、出産、二人の子が小学校を終えるまでをおよそ2時間にまとめ、感情移入できるような内容、坦々と母親の奮闘を描いてるかと思えば、引き込まれるような展開、最後には見事に心奪われる感動
日本のアニメ映画に細田あり と思い起こさせた
今回は登場人物が少なく、じっくり丁寧に育児奮闘を描いているが、
若干それが話の進行をゆっくりとさせているので☆4つ
アニメだと馬鹿にしているようないい歳の人にこそ見てほしい
人とは違う人生
この映画を見ながら、
いちばん 思い出したのは 岡本敏子さんのまなざしでした。
頭もよく、優しいけれど、自分の狼としての血を思ってか、
いつもひとりだった男性と、愛を築こうとする女性とのエピソードから
すべてのお話が始まります。
お母さんが働き者で、やがて住み着いた地になじんでゆく様子は
見ていて、感動的でした☆=
それでも、子供たちは自分のアイデンティティに悩むようになり、
いずれ、理解しあい、受け入れあえる存在をみつけてゆきます。^-^
はたして、人間として生きることを選んだ少女が、
最後まで「世間」には狼であることを隠し続けるのか。。
そのことに答えは書かれていませんでしたが、
特別な存在を見つけるシーンで映画が終わることは、
正解だったと思います。
他人の評価は、ときに痛くて辛くても、肉をそいで食べてしまうわけではない。。
自分は変わり者><と、悩んでいる方にはおすすめしたいです♪
おおかみこどものお話
私が最も危惧していた「おおかみこどもに対する差別、偏見」がほとんど描かれていなかったのは良かったです。
陰惨な空気をほとんど感じず、気持ちよく観ることができました。
どう解釈しても納得いかない点はありましたが、その他の点はとてもよかったです。
納得いかない点↓
・ランドセルがまだ残っているのに生徒を探さない教師
こればっかりは納得いきません。
普通探すでしょ?と。それともよっぽど教師がダメな学校なんでしょうか。
あそこは最低限、教師が雪と草平を探す描写があるべきだと思います。
今作は印象に残る風景が多く、自然に涙がこぼれました。広大な山脈、入道雲、水田、朝日、田舎に暮らしている私でも見たことのない景色ですが、とにかく印象深いです。
あと、時間の経過の表し方が個人的に好きです。
よく観ていないと、序盤で「おまえらもうそんな関係になるのかよ!」と思ってしまうでしょう。(出会ったのは初夏だが、デートの際はクリスマスまで進んでいます。)。雪がいつの間にか草平をそうちゃんと呼ぶようになっていたのは思わず和みました。
こども達が、成長するにつれて人生を選択していくようになったのは切なくなってしまいました。
雨と雪の力関係が逆転してしまったあたりはとても心苦しかったです。
雨を探しに行くシーンで賛否両論になっているようですが、私は全く問題ないと思います。というのも、雨を探しに行くか、雪を迎えに行くか、分かれ道で花が迷うシーンがあるからです。私にとってはあれ以上のためらいの表現は無駄です。くどい!としか感じません。
雪は雪で「早く大人になりたい」と言っていたので、花が迎えにこないのは何か事情があってのことなんだろう、と割り切れる精神年齢になっているはずです(草平に自分の正体を明かしたことがなによりの証拠)。
個人的には、語り部となっている雪が再度出てこないまま終わってしまったので若干置いてけぼり気味になりました。もう少し余韻が欲しかったかな。
まとまりのないレビューですが、おススメできる映画であることは確かです。
いい映画でした。
母親の愛情たっぷりの気持ちと、二人の子供それぞれの成長物語。とても爽やかに見終わることができました。雨が学校に馴染めずに自分の道を進むことを決めたときも、母親は子供を信じて見送る優しさ…。やっぱり親はすごいんだなって、感動しました。全体的に絵面も優しくて好きです。
孤軍奮闘する、母へ
「時をかける少女」などの作品で知られる細田守監督が、次回作「天地明察」が注目を集める宮崎あおい、「ミッドナイト・イーグル」などの作品で主演を務めた大沢たかおを声優に迎えて描く、繊細な親子の物語。
知人の子供を観察していると、驚かされることばかりである。この場で、そんな事を言うのか!そんな事をするのか!全く予想のつかない言動が容易く撒き散らされ、「・・・う~む、分からない」と首をかしげてしまう。
そんな時、知人は上から叱るでもなく、下から甘やかすでもなく、同じ目線で自分の子供を静かに見守っている。「子供=自分の所有物」の方程式はそこには無く、「子供=敬意を示す、異質なもの」という心地よい意識だけがある。
その意味では、本作は徹底して子供への敬意、謙虚な視線に満ちた物語である。何せ、二人の子供たちは「人間」というカテゴリーすら逸脱した「異質な存在」として世界に息づいているのだから。
主人公的な立ち位置をとる女性、花が愛した男性は、一人のおおかみ男。この一種、奇抜な設定に本作の大きなポイントがあるように思えるが、実のところ「オオカミ=異質な存在、理解を超えた存在」という視点で物語を考えれば、ごくごくシンプルな家族の物語として考える事ができないだろうか。
だからこそ、物語の流れをリードする声が娘の「雪」である事も納得である。母である「花」が「家族の長」としてストーリーを引っ張っていく事だって可能だったはず。その中で「雪」にその役割を任せたのは、作り手の「子供」に対する敬意に由来する。
おおかみこどもという「不可解」な存在に主導権を与え、親=監督はただ、その語り手の回想、追憶を静かに見守る。ありきたりな「人間と、獣人の共存」というサスペンス的構図を裏切る仕掛けが、豊かに動き出す。
オオカミに変化した子供が人間に見つかり、偏見に満ちた差別を受けるという定番の逆境を持ち込まなかったのも納得である。あくまでも作り手は「オオカミ=野蛮、危険」ではなく「=興味、敬愛」として考えており、一組の家族が辿る日常をありふれた形で描こうとする意識に基づいている世界である事を実感させてくれる。
そう、この物語は「オオカミ男」という奇妙なテーマにスポットを当てるべきではない。「理解できない子供と、向き合え。分からなくても、信じろ」この簡潔なメッセージを2時間強の物語に落とし込んだ「素直な家族の物語」として鑑賞するのが正しい。
思い通りに動いてくれない子供に、悩む大人。自分勝手に突っ走る子供に、戸惑う大人。そんな現代に潜む「親子のあり方」が表面化しているからこそ生まれた物語。今こそ、子育てに奮闘する、いや、孤軍奮闘する母親こそが寄り添うべき一本だと思う。
子育て
花の愛情が偏りすぎていて萎える
取りあえず、クライマックスの花が雨を探しに森へ行く件に関して。
・花が雪を放っておきながら、それに対して何の葛藤も無い。←親としてどうよ?
・雪を追って森へ入った花だが、森で雪を見付けられたとしてその後どうするかのプランが皆無。森へ入るには軽装すぎ、実際に事故まで起こしていて、愛情深い親というよりもただの馬鹿。
・助けられた後、雨の遠吠えを聞いた途端に雨を人間的に育てようとするのをいきなり諦める。唐突すぎ。
・で、花が雪を放っておいた事に関する言い訳もなにもなし。現実問題として、台風の中で親を待っている子供を放っておきながら、その点に関して無かった事にしている作り手の倫理観には疑問が残る。
・全体に花は雨に対してのみ愛情を注いでいて、雪に対して愛情を注ぐ場面が少なく、子供に対する愛情が不平等。
・あと転校生の男の子の親が「新しい子供がいたら、お前はいらない」と男の子に言ったとされるけれども、あの母親の設定では権利や世間体にはうるさい母親では? 我が子も迎えに行かない親というレッテルを貼られても平気なのかな? そういう母親というレッテルを貼られている事を、新しい夫に知られても平気なのかしらん。
・基本的には、その他にも問題の多い映画だと思う。
・前半30分くらいの、引っ越しをする前までの件はただ冗長なだけ。単なる説明に過ぎない。
・雨が溺れるシーンは通過儀礼として機能しきれていない。その前後でキャラクタとしての変化がない。(それ以前に狼や森について興味を持っているし、鳥を捕まえたのも溺れる前)
・本を読んで農業を学んでおきながら、種芋を知らないばかりか、切らずに植えるとか。どんな本を読んでるのか知らないけれど、そんな事も書いてない本てあるのか? それともやっぱり花って馬鹿なの?
・田舎や自然に対する過剰な幻想が鬱陶しい。
・つか、森に「主」って。
・しかもそれがキツネて。
・で、それの代わりが狼? 何がしたいの?
・背景のCG描写とキャラのアニメ描写の噛み合わせが悪い。
・単に自然の美しさを表現するなら、実写で十分な訳で、影を排除した不自然なCGで表現する意味が不明。
・とはいえ『サマーウォーズ』よか酷くないので、興味がある人は観てみても良いんじゃないかな。
これは寝られる。
そうだったのかぁ
宣伝記事で、大沢たかおさんは自分のアフレコがない日でも現場に来ていてたと書いてありました。
大沢さんのオオカミオトコが最後の方で言ったセリフに「ずっと見てたよ」というのがあって、これをリアルに言うためだったのかと、勝手に理解して、勝手に「さすが!ザ・大沢たかお!!」と感動していました。
雪の子供の頃がすっごく可愛いかったです。声優のももかちゃん天才!
それだけに、中学生になって、自分の人生の重みを受け止め始めた頃は痛々しく感じてじ~んとしました。
弱っちかった雨が、いきなり大人の階段登り始めちゃった気がして、もうちょっと時間が欲しかったな。
お母さんの花さんは、「母は強し」が基本という事を思い出させてくれました。
上映終わりには、拍手~や鼻をすする音がしました。
私は両方の音を出していました。
空の青がきれいなこときれいなこと。
公開初日ということで劇場はほぼ満席。
小さい子を連れた親子連れが目立ちました。
鬼のような丁寧さで描写される子育てシーンにあるあるとうなずき、成長してぐずったり甘えたりする雪と雨を自分に置き換え省みたり、甘えてたはずの雨があっという間に親離れを果たしてしまうなど、やりたい事をやってろくに故郷へも帰らないあの時の自分ではないかと思ったり。
雪と雨がそれぞれの道を見つけていくプロセスがとても丁寧で、だから導き出した結果にも納得がいくのです。
突然雨がいなくなってその後花は近所の人たちにどういう説明をしたのだろうとヤボなことが頭をよぎったりしたけれど、後半はもう、観客のお母さん達のすすり泣きで劇場内は包み込まれていました。
妻に『ありがとう』と言いたい
家族向け作品?
細田監督のターニングポイントとみるか、失敗作とみるか
監督作品は「時をかける少女」と「サマーウォーズ」だけしか見ていませんが
活力・魅力あるキャラクター達がグイグイ物語を引っ張っていき、
最後に突き抜けて爽やかに大団円!!!
細田監督に対して個人的に持っているイメージはこのようなものです。
世間の多くの方が同じようなイメージを持っているのではないかと思います。
今作はどうでしょうか。
“彼”が退場してからの30分くらいは
話がヘビーで爽やかさとは程遠く、
“アレ、こんなはずでは・・・”と。
その前に、雪の出産に至る過程も
「カールじいさんの空飛ぶ家」のまんまではないか!!!
とちょっと憤慨してしまいました。
(それでも素敵なシーンなので「カールじいさん~」の冒頭が素晴らしすぎるということを再認識)
引っ越す前に花が雪と雨に問います。
「人間、狼、どちらとして生きたい?」
後半の展開は、この問いに対する回答で
彼女らは自らのアイデンティティを主張していきます。
そして、子供らだけでなく、
問いた花自身も、
母親としてのアイデンティティを確立していこうともがきます。
しかし、丁寧に描くあまり
この3つの自らのアイデンティティを模索する話が
上手く噛み合っていないのではないかと思います。
雪の“怪我させた問題”が解決したかなと思ったら
それまで暫くスクリーンから遠ざかっていた雨が突然現れ、
“先生に会いに行ってくる”と言い始め・・・。
実際、“先生”が出てきた辺りから
劇場も飽き始めたような空気が・・・。
引っ越した時点で
「となりのトトロ」を連想し、
“山に何かいるんですか”というフレーズに
まさかと思ったがそうならず、
“動物保護センターに狼が保護されている”という状況に
“ひょっとして仲良くなって・・・”と思ったがそうならず。
親切にしてくれたじいさんをはじめ、親切なご近所様が出てきて
これは「サマーウォーズ」的展開で
最後に“じいさんは笑ってエンディングか”と思ったらそうならず。
ある意味、細田監督に期待したものをことごとく裏切る展開でした。
他の方がジブリ作品のようとおっしゃられていましたが、
私は本作はジブリ作品とは相容れないものと感じました。
「サマーウォーズ」のようなある意味、
活劇的な作風を推し進めていくのであれば
万人受けするジブリでも細田監督は重宝されたと思います。
しかし“一人親から見た子”と“自分とはなんぞや”という
結構重いテーマを扱っているので
世間の“紋切型の細田イメージ”を払拭しようという意図も
あるのかもしれません。
今までの監督の作風であれば
絶対最後の台風のエピソードは
それぞれで確立したアイデンティティ生かして
結束して何かに立ち向かうという話になるのに
そうではなく、あくまでも3人を別々にして
それぞれで自己完結してしまうというオチになっています。
ここがこの作品に対する好き嫌いに出てくるのではないでしょうか。
色々不満等は書きましたが、
中盤の年月の経過と雪・雨の個性を
小学校の教室で表現するというくだりは、
やはり“宮崎駿の後継者”と唸らざるを得ません。
また、初雪の中での疾走するシーン、山を下るシーンは
その躍動感に思わず涙してしまいました。
これを機会に、ドラマ系な作品に舵を切るのではなく
“次回は活劇ものがみたいなぁ”と劇場を後にしました。
---------以下、追記------------------------------------
eiga.comの映画評論を観て、さらに思ったことを追記。
自分を含め、劇場に来た本作を見ているのは
世間的には“オタク”と呼ばれる非モテ系の方が多い。
本作は間違いなく、“女性に見て欲しい”と本当に思う。
そして、自分を含め非モテ諸君よ、
花(宮崎あおい)のような女性は現実にはいないぞ!!!
と世界の中心で叫びたい。
ところで、姉が雪、弟が雨。
レビューを書いていて気づいたのですが、
なぜタイトルは“雨と雪”で弟が先に来るのでしょうか。
やはり、監督は“失われた側”への想いが強いのでしょうか。
往年のジブリ作品のテイスト
狼人間の子どもを育てる母親と、子ども達の成長物語。
「世界は不思議に満ちている」とのことで、ハラハラドキドキの大スペクタクル!…のようなものはなく、ちょっと不思議な日常を描いたお話。
どちらかというと大人向けの内容。
(とは言え、自分の行った試写会では小さな子どもも沢山いましたし、クライマックスシーンで大泣きしていた子もいましたが)
最初の方はちょっと説明が多いかなぁ…と思っていましたが、次第に世界に入って行き、一緒に成長を見守るような感じになって行きました。
もっとも自分は、クライマックスシーンでは花(母親)ではなく雨(息子)側に感情移入していた感が否めなくもない。
個人的にキャストに著名人を並べるのはどうよと思っている訳ですが、宮崎あおい、あまり気になりませんでした。
欲を言えば、エンディングに入る部分でもうちょっと余韻に浸らせて欲しかったか。
そのあたりを考慮してこの評点かなと。
もうあと10年分観たい。
花と子供達の成長をとおして、懐かしい感情がたくさん湧いてきました。
子供はもちろんですが、お母さんたちにも観てほしい映画です。
親が何から何までお膳立てしてあげなくても、
自分らしさを押し殺さなくても、
子供はちゃんと自分のいく道をみつけられるんですね。
今までに観たアニメ映画の中で、私は一番好き。
結末の盛り上げ方がやや足りないけど母子の絆の深さに感動。宮崎あおいが素晴らしい!
なんといっても『八日目の蝉』の奥寺佐渡子の脚本であるだけに、母子の情感はたっぷり。一児の母でもあるあるだけに、子育ての大変さが滲み出ていました。きっといま同じように子育て中の若いお母さんには、「そうそう!」って、とても共感を抱かれることでしょう。 ただラストの盛り上げ方が今ひとつという気がしました。姉の雪の初恋。そして弟の雨の自立。それぞれおおかみの子供でるという宿命を背負って、自分の生きる道を開こうとする姿には共感は持てるのですが、もう少し時間切れ気味なラストに余裕を見せて、一波乱を描いて欲しかったです。
映像的には、バーチャル空間のリアルティを描ききった『サマーウォーズ』のときよりもさらに進化。実写に近い3D描写を取り入れています。花と子供たちが散歩するシーンや雨が「先生」とともに森を駆け巡るところは、スピーディな情景移動と相まって、観客もスクリーンのなかで森を駆け巡っているような錯覚に襲われてしまう映像でした。
さて、知り合って好きになった男性は、なんとおおかみ男だったというあり得ない設定の本作。その奇天烈さを、花夫婦の暮らしぶりに密着し、丹念に日常生活の悲喜こもごもを描くことで、次第に違和感をなくしていくところが、細田監督の演出の上手いところだと感じました。
なかでも、『カールじいさんの空飛ぶ家』の冒頭を彷彿させる無音シーンは感動的。花と夫との慎ましい暮らしぶり、貧しいけれど笑顔の絶えない幸福そうな花の表情に、思わず目頭が熱くなりました。
その後生まれてきたふたりの雨と雪の子供たち。だだのこねかたはさすがに毎日子育てに奮闘している脚本家の実感がこもっていました。しかもおおかみパワーが加わって、すさまし暴れようなんですね(^^ゞ
子供たちが病気になったとき、小児科に連れて行くべき、動物病院に連れて行くべきか迷ってしまう花の困惑ぶりが可笑しかったです。
夫の死亡はやや唐突だけれど、オオカミの姿のままで死んでいった夫がゴミとして回収されるところに居合わせても、遺体として主張できない花の悲しみはよく伝わってきました。その死の理由にも、ちょっとホロリとさせられます。
それでもめげずにふたりの子育てに取り組んでいく、花の気丈さが本作のいいところ。決して暗くならないのですね。そして、家族の秘密を守り、将来子供たちがおおかみとして生きることを選択した場合を考えた花は、長野県の山深い山村に引っ越すのです。
引っ越し後は、アルプスの山々や緑深い森など自然の描写がリアルで素敵です。また人との関わりあいを避けて都会から引っ越してきたはずなのに、山村の人々は、遠くから足を運んで、畑仕事のアドバイスなど花の自活を助けてくれるです。そんな田舎ならではの人々の助け合って生きる人情にもほだされました。
やがて物語は、雨と雪の成長と共に、おおかみであるべきか、人間として生きるか。姉弟それぞれの生きる道の選択を迫ります。
雪は、学校生活がとても気に入り、友だちもできて、普通の小学生として周囲に溶け込んでいきました。なかでも、転校生の少年とは、淡い恋の予感が。どうも雪は、人間として普通に生きることを望んでいるようです。そんな雪が、少年に自分の正体を打ち明けるシーンの描写とても印象的でした。
一方弟の雨は、森の主の年老いたキツネを「先生」とよび、学校にも行かずに、毎日
森に出向き「先生」に付き従って、森の掟を学びます。
10歳になった雨。人間としてはまだ子供ですが、おおかみとしては充分に自活しうる年頃を迎えていました。「先生」が死んで、森は新たな主が求められていました。嵐の日にとうとう雨は巣立ちを決意します。
それを察知した花は、嵐の中を必死で雨を探して、遭難してしまうのです。花はどうなってしまうのか、ラストは劇場でご覧ください。
出演陣では、花の吹替えを担当した宮崎あおいが抜群に花の明るさや愛の深さを表現していてよかったです。夫役の大沢たかおも、渋めの声で世間から隠棲して生きてきたおおかみ男らしさを上手く表現していました。
ところで、この夏、定番のシブリ作品がないというのが一番の異変ですね。代わりに登場したのが、この細田守監督作品。日本テレビが全面的にバックアップするからには、ヒット間違いなしでしょう。『コクリコ坂から』では老害さえ感じたジブリに変わって、これからはスタジオ地図の時代がやってくるのでしょうか。次作も楽しみです。
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