「子供を育てる母親の苦労と偉大さ、さらに子離れの現実をも描いていて素晴らしい」おおかみこどもの雨と雪 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
子供を育てる母親の苦労と偉大さ、さらに子離れの現実をも描いていて素晴らしい
細田守監督による2012年製作(117分/G)日本映画、配給:東宝、劇場公開日:2012年7月21日。
怒ると人間の子供からオオカミの姿に変化してしまうという映像に、魅せられてしまった。夫がオオカミ人間で、当然子供はオオカミと人間のあいのこという設定が秀逸と唸らされた。早々と夫は事故死してしまい、主人公の花(宮崎あおい)が残された子供2人を抱えて都会から田舎に移り住んで何とか苦労しながら育て上げるという物語も、類型の記憶は無くとても新鮮に思えた。
畑で作物を作ろうとするが失敗の連続というのも、まあそうだよねというか現実的。畑作りでの韮崎じいさん(菅原文太)のスパルタ指導が印象的で、結局は周囲の人たちの助けで何とか作物ができるようになる展開が上手い。脚本は後に「国宝」を書く奥寺佐渡子と細田守。2人の子供をワンオペで育てる母親の大変さが見事に表現されていて、自分の娘の今の状況とも重なり、身につまされもした。
そして、長女の雪のキャラクターが何とも秀逸。超活発でオオカミ的趣味であったのを、周囲に合わせてどんどん少女キャラなっていこうと努力する姿が何ともいじらしく、長女ってこうだよなというリアリティも感じた。
弟の雨はお姉さんと異なりおとなしくシャイで、その子がオオカミを師匠と崇め、やがて師匠の代わりに森を治めるものとなるという展開もとてもユニーク。幼い時のイメージで、私が雨を守らねばと家を出た息子を探して森を彷徨う花の姿が、男の子の成長をすぐに受け入れられないありがちな母親らしくて切実に感じた。
物語だけでなく、楽しくて雪山を子供達がオオカミの姿にもなりながらひたすら駆ける姿などスピード感に溢れた映像の数々もとても秀逸で、それだけでも感動させられた。
監督細田守、原作細田守、脚本奥寺佐渡子 細田守、製作指揮城朋子、製作藤本鈴子 齋藤佑佳 岡田浩行 井上伸一郎 平井文宏 阿佐美弘恭 弘中謙 市川南 高田佳夫 植木英則、エグゼクティブプロデューサー奥田誠治、Co.エグゼクティブプロデューサー高橋望、プロデューサー齋藤優一郎 伊藤卓哉 渡邊隆史、アソシエイトプロデューサー川村元気 村上泉、キャラクターデザイン貞本義行、作画監督山下高明、美術監督大野広司、色彩設計三笠修、CGディレクター堀部亮、美術設定上條安里、衣装伊賀大介、劇中画森本千絵、編集西山茂、録音小原吉男、音響効果、今野康之、音楽プロデューサー北原京子、音楽高木正勝、主題歌アン・サリー 高木正勝、アニメーション制作スタジオ地図、プロダクション協力マッドハウス。
声
花宮崎あおい、彼(おおかみおとこ)大沢たかお、雪(少女期)黒木華、雨(少年期)西井幸人、雪(幼年期)大野百花、雨(幼年期)加部亜門、草平平岡拓真、草平の母林原めぐみ
細川中村正、山岡大木民夫、韮崎のおばさん片岡富枝、韮崎の旦那さん小林隆、天童井上肇
田辺先生染谷将太、ラジオ・アナウンサー桝太一、土肥の奥さん谷村美月、堀田の奥さん麻生久美子、韮崎菅原文太。
