「親が最後に贈る言葉」おおかみこどもの雨と雪 とうふさんの映画レビュー(感想・評価)
親が最後に贈る言葉
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大学進学を機に一人暮らしをする子どもに向けて「毎日栄養のあるものを食べて、睡眠をしっかりとってね。お風呂やトイレの掃除をこまめにするのも忘れずに。それから…」とお別れの言葉が長くなってしまう親は多いと思います。子どもからしたら「うるさいなあ、わかってるよ」という感じなのですが。
まだまだ子どもだと思っていた我が子が一人暮らしなんて心配でたまらないし、離れて暮らすことになるのも寂しいという親心です。
花も「雨は怖くて泣いてるかも。私が助けに行かなくちゃ」と嵐の中飛び出していきますが、実際雨は全然泣いてないし、むしろ自分の方が遭難して雨に助けられてしまいます。一人前のオオカミとなった雨が野生の世界へ旅立とうとした時、「行かないで」と呼びかけますが雨は振り返りもしません。「雨はもう大人になっていて親から巣立っていく、これがお別れの時なんだ」と悟った花が最後に言った言葉が
「しっかり生きて!!…元気でいて」
これは一人暮らしを始める子どもにかける「毎日ちゃんとご飯をたべてね」という言葉と本質的には同じです。この子のそばで支えてあげることはもうできないんだとわかった親の心に最後に浮かぶのは、子どもには「しっかり生きて、元気でいて」ほしいという願いなのです。
おおかみこどもという存在は完全にファンタジーで、現実的ではありません。しかしこの親心、親から子どもへの最後の願いはリアルすぎるほどリアルで、多くの親が同じ思いを持っていると思います。心に刺さる作品でした。
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