劇場公開日 2012年2月18日

  • 予告編を見る

「大人げない大人達のトークバトルロイヤル!」おとなのけんか 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0大人げない大人達のトークバトルロイヤル!

2012年6月10日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

知的

子どものけんかの仲裁に入った二組の夫婦。初めの内こそオトナの対応を見せる夫婦らだったが、
小さな不平不満が積み重なってだんだん険悪なムードになり、
最後には舌と言葉で殴り合うような恐ろしい修羅場に……。

物語のほぼ全編がアパートの一室内のみで進行する本作。
生々し過ぎるトークと狭〜い室内で敵味方や形勢がコロコロ逆転する展開が笑えて笑えて!
両親vs両親でいがみ合ってたはずが、なぜか夫婦どうしで怒鳴り合いが始まったり、
男同士でいつの間にか仲良く酒を呑み交わしてたり……。
何やってんのアンタら(笑)。
辛口過ぎるユーモアに、劇場内でも始終笑いが起こってましたよ。
僕が観た時は、終盤になって遂に笑いが止まらなくなったオジサンもいた(笑)。

共感できる部分もあれば理解できない部分もある主人公4人。
個人的には冷笑主義的なクリストフ・ヴァルツに共感する部分が多かったが、
(けど電話のタイミングはわきまえなきゃダメダメ)
全員の意を汲んで場を和ませようとするジョン・C・ライリーも素敵だと思ったし、
人間かくあるべきと理想論を語るジョディ・フォスターも好き。
酒が入って大暴走するケイト・ウィンスレットにも爆笑。

ま、人間、相手の事を否定し出したらキリがないってことですよね。
寂しいことを言うようだけど、どんなに近しい間柄だとしても、
他人の心を完全に理解するなんてできっこない。
だけど、少しでも歩み寄ろう、理解しようとする努力は出来るし、
嫌いな部分も『まあそんなのもおるよね』くらいな感じでスルーも出来る。
……正直、スルー出来ないほど嫌いなヤツも世の中にはいるけどねっ。

原題『carnage』は、辞書で引くと“大虐殺”という意味。
ユーモアたっぷりの本作品には不釣合な、おっそろしく物騒な単語だが……
本作みたく、自分のエゴや価値観を無理に相手に押し付け合う事こそが、
人が繰り返してきた『carnage』への道なのかも。
いがみ合わないだけの距離というか、均衡みたいものを保つのが肝要。
それが難しいから世の中良くならないんでしょうけど。

ラストで子ども同士が仲直りしてた事には、他の方のレビューを読むまで気付かなかった……。
ヘンなプライドや知恵や偏見を身に付けちゃった大人の方が、けんかの引っ込みは付かないものかも。
う〜ん、大人になんてなるもんじゃないっすね。
あ、しまった、もう遅い。

<2012/5/25鑑賞>

浮遊きびなご