「子どもケンカの話をしていたはずなのに」おとなのけんか えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)
子どもケンカの話をしていたはずなのに
11歳の少年が遊んでいて友達の少年を小突いて怪我をさせてしまう。怪我をさせた少年の両親が怪我をした両親のもとを訪ねる。
最初は寛容な態度を見せる被害者両親、謙虚に謝罪の姿勢を見せる加害者両親、社会的な顔で取り繕い、何とかまるく収まりそうになるのだが、些細なことがいくつか重なって、ボロが出始める。
それぞれの両親の計4人がリビングで話し合うだけの作品。が、演じる4人の役者の奥深さに、精密に計算された舞台を観るように、引き込まれていく。
口論の論点は次第に、被害者-加害者だけでなく、それぞれの夫婦間の対立、男-女、男-男、女-女、父-母、家族-仕事、世俗-理想などなど、様々な対立軸へ飛躍していく。
こうした、怒りという感情が引き出す、様々な「飛躍」の妙が実に見事。子どもケンカの話をしていたはずなのに、というシーンは、鑑賞者の思い当たる節を刺激する。時折、苦笑いしながら鑑賞する大人の作品。
タイトルを全部ひらがなで「おとなのけんか」とした訳者は優秀。(原題の「Carnage」は虐殺という意味)
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