「映像と内容のギャップ。」グスコーブドリの伝記 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
映像と内容のギャップ。
宮沢賢治作品にまったく明るくない私は^^;この原作も未読。
チラシを見て、可愛い猫だなぁくらいにしか思わなかったので
冒頭のファンタジーな童話世界から、急に冷害の話にトーンを
変えた時には、ちょっと面喰ってしまった。
あ…こういう話だったのかぁ。う~ん、好き好き分かれるかも。
確かに彼の黙々と働く姿(自己犠牲の精神)は賞賛に値するが、
この話をなぜ今?というのは、やはり震災の被害と重ねて観る
向きが多いからなのだろう…と感じた。
自然災害の猛威に為す術もなく家族を失ってしまった子供達。
悲嘆に暮れながら過ごす兄妹に、死神?が妹をさらってしまう。
なんといえばいいのか…。
よくいえばリアル、悪くいえば救いのない展開に心が重くなる。
学ぶべき脅威がそこにあり、それが人災被害ではないという、
恨むべき場所も泣き言を言える人もいない、非常に辛い現実。
主人公・ブドリは、そんな中でもただ黙々と仕事を求める。
あんなに暗かった森を抜けると、明るい農村が広がっており、
これで少しは救われたか~とこちらも胸を撫で下ろすのだが、
この物語は簡単に幸福へと結び付いていかない。
当たり前といえば当たり前なのだが、一生平穏無事な気候が
続くということはなく、幾度かの転職の後火山局に勤めた彼に
またもや大冷害の危機が迫る。そこで彼の選んだ対策とは…
映像は確かにキレイだ。
一見表情の見えないブドリの、淡々と話す口調(小栗くん巧い)も
彼の性格を詳細に顕わしており、聞いていて心地良い。
ただ時折ブツッと切れる場面の切り替え、ラストの小田和正の
有名歌のあとの不自然な途切れ方など、いちいち気になった。
もっとなめらかにできなかったのだろうか。
雨にもマケズ、風にもマケズ、…まさにその通りの話である。
(しかしもの悲しい。あの親にしてこの子あり、とは思うんだけど)