劇場公開日 2012年2月11日

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「おばかえいがはどっち」タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5おばかえいがはどっち

2021年12月4日
PCから投稿

エンタメにはおばか枠という領域ががあり、映画でいえばエドウッドやトロマなど、低予算・B級と呼ばれる映画群で、概してアメリカ産の印象がつよい。(これはカナダ映画だけど。)

もともと日本人は、アメリカ人にたいして、細かいことにこだわらず、おおざっぱで明るい──という紋切り型の先入観をもっている。

それが陽性な映画の風合いと重なり、大味なアメリカ映画を見ては「おばかだなあ」と嘲笑する見解が定番化した。(もちろん愛着心も込めて、だが)

だが、じっさいにおばか映画を生産しているのは日本であって、わたしたちはがんらい人様の国のエンタメをおばかなどとけなせる立場にはない。

火口のふたりという映画があった。日本映画界の重鎮監督のさくひんで、権威主義団体の旬報が2019年度の最高の日本映画に選定した。堂々の第一位だった。内容はいとこどうしが出会ってやりまくる。それで火山が噴火する。噴火は絵でひょうげんしていた。死霊の盆踊り顔負けのおばか映画だった。(個人の見解です。)

新聞記者という映画があった。「勘違いの正義」と「妄想」がテーマの映画。みずからをヒロインと信じている女性記者が妄想をつのらせた結果、政府が生化学兵器を研究・活用しようとしているという(妄想)情報をつきとめ(ドンキホーテのごとく)槍を持って風車に突き進まんとする話。ほんとの新聞記者が原案を書いた渾身のおばか作品だった。(個人の見解です。)

かれらは、おそらくじぶんがおばか映画をつくったとはゆめにも思っていなかったと思う。それはThe Room(2003)をつくったTommy Wiseauも同様であっただろう。だが、人を楽しませた、もしくは少なくとも楽しんでもらおうとしていた──点において、エドウッドやTommy Wiseauのほうが何倍も賢かった。とわたしは思う。
いったいどっちがDisaster Artistだと思いますか?

本作はB級ホラーパロディの外観から、おばか映画枠におさまっているわけだが、ごらんになればわかるとおり、気取った「ザ日本映画」とは比べようがないほど楽しい。──だけでなく、観衆を楽しませようとしていることが有り体にがわかる。
(日本映画界が理解しない基本の前提だが)映画の真価はつくった人の満足度ではなく見た人が楽しいことだ。

たしかにとばっちりにひとしい牽強付会な比較ではある。だがアメリカ映画が日本の巷間で「おばか映画」と称されてしまう現象に、個人的にはいらだちを禁じ得ない。じっさい日本映画のほうがずっとばかなので。

とはいえ、タッカーにけしかけられたデイルみたいに女性にアプローチしたら、きらわれるってより、たいほされるぞ。自己肯定ってのはほどほどがいいわけで。

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津次郎