グッモーエビアン!のレビュー・感想・評価
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言えるときに言わないと。
今のご時世、娘をいい学校にやって「人並み」の人生を送らせてあげようとするだけでも相当に難儀であり、「つまらん」の一言で片づけられちゃかなわん!という気もしますが、そこは「人並み」にこだわりすぎることはやっぱり「つまらん」ことだとも思うし、普段いい加減な奴がたまに真面目なことをやるとすっかり評価が上がったりするのは、普段から真面目が当たり前で生きてる人にとってはちょっとうらやましくもズルい気もするわけで…。
いかん、これ映画のレビューだった。
現実と向き合った左よりの映画
70年代的なアナーキーであり、リベラルな価値観を土台とした映画。
この手の映画は、自由や反権威を無責任に持ち上げ、ハチャメチャな物が多い気がするが、この映画は、現実に向き合っている。
印象的なシーンは、主人公の母親が、家庭訪問に来た教師とのやりとりで、就職を進路に決めた娘の事を教師から言われた事に対し、「そんな人生はつまらん」と言い放つのだが、自分は自由に生きてるのだ羨ましいんだろ的な、どや顔でなく、実は自分の生き方は、娘に取って間違った影響を与えているのではないか?と言う迷いを明らかに含んだ言い方なのだ。
そんな母親に反発心を感じる娘は娘で、ジャガイモのくだりで、非常識なヤグの方が、全然、周辺の人間に支えられてる事への感謝と敬意に満ちている事に気づかされる。
普通ではない母親なりの人生の覚悟や愛を知り、自分達にしかない家族の形に回帰する娘の心理描写は素晴らしかった。
アメリカンニューシネマは、タクシードライバーで、現実と向き合い終焉したが、それに似たにおいを感じた。
しかしヤグのボーカルはヒロトそっくりである(笑)
何気ない家族ネタをここまで引っ張って感動ドラマに料理してしまう山本監督の手腕はなかなかのものだと思います。
見た目のちゃらちゃらした雰囲気と違って、けっこう家族の絆に感動してしまったのが本作です。原作は、吉川トリコ原作の同名コミック。
毎日をおもしろおかしく過ごす元パンクロッカーの母・アキ(麻生)としっかり者の娘・ハツキ(三吉)、そこに突然転がり込んできたバンドの元メンバーで、長年アキに思いを寄せ続けるヤグ(大泉)の3人が、葛藤しながらも様々な問題を乗り越えて家族の絆を深めていく姿を描き出すという物語です。
アキとハツキは母子で仲良く名古屋で暮らしていました。17歳でアキを産んだとき、父親はDVで出産前に別れてしまい、母の細腕一つで育てたのに、アキは屈託無く成長していったのです。
そんなある日、約2年間、海外放浪の旅をしていたヤグが突然帰国。アパートで2年ぶりの共同生活が始まったのでした。
実は、ヤグとは学生時代からのバンド仲間。15歳の時、自分が父親ではないハツキを身ごもっていたアキに結婚を申し込み、家族同様に暮らしてきたのでした。ヤグはハツキとアキに愛情を注ぎ、アキはヤグを面白がることで、まるで本当の家族のような関係が成立していたのです。ヤグは自分の言動を何でもロックッンロールで説明づけてしまうけど、そんな単純なものでなさそうです。実際にヤグとアキの関係は、単なる男女の関係を超えた、同志的な連帯感を強く感じられました。血のつながり以上の絆が、3人を強く結びつけていたのです。
ところが、放浪から戻っても相変わらず自由奔放な性格のヤグと、働きもしない彼を明るく笑い飛ばすアキの2人を、ハツキは許せず、イラついてしまうのですね。非常識な大人に囲まれて育ったハツキは、年頃に似合わず常識を重んじるしっかり者に育っていました。反面教師のごとく振る舞う大人たちを見て、ついついだめ出しをして反抗してしまうという気持ちはわかります。ただそこには、父親を知らずに育ったハツキに断りもなく置き去りにして、勝手に放送の旅に出かけれてしまったヤグへの、甘えたかった気持ちも込められていたのではないでしょうか。
ここで解説すると、大泉洋が演じるヤグは何事もテンション高めのウザイ存在なんですね。観客が見ても生理的な不快感を禁じ得なくなるのは、ハツキの視点でヤグを観察しているからなんです。ハツキは親友のトモにヤグの言動をいちいち報告します。その関心の高さをを察すると、ホントはハツキはヤグに愛されたいんだという気持ちがバレバレなんですね。ハツキというフィルターを通してヤグを描くところが演出としての巧みさを感じました。
そんな中、ハツキの親友トモがハツキとけんかしたまま転校してしまいます。自分がヤグにカリカリしていたばかりに親友の大事な転校の打ち明け話を聞いてあげられなかったことにショックを隠せないハツキでした。後悔するハツキの気持ちがこもっていて、なかなか心の迫ってくるいいシーンでした。
ある日担任が当然家庭訪問に訪れてアキに、ハツキが進学しないつもりだと伝えます。担任は進学を熱心に勧めるものの、アキはきっぱりと大人が決めたレールを行くのではなく、自分の将来は自分で決めるべきだと言ってのけるのです。
そんな親心を露とも知らないハツキは、自分のことなんかよりもヤグに向いているんだ。自分は邪魔存在なんだとアキに対して反抗心を募らせます。その言葉を耳にしたヤグがあり得ない行動に出るのです。アキをなじった言葉に切れたヤグは、ハツキをビンタに。傷ついたハツキは家を飛び出してしまいます。でもね、きっとハツキはヤグに父親としての存在感を感じてしまったことでしょう。
ハツキを探し出したアキは自分とヤグの過去を話すことに。そしてハツキの名付け親がヤグだったことも明かします。それは親としてというより人生の先輩としての愛情がこもっていてグッときました。
劇中では語られなかったのだけど、たぶんハツキは片親で育ったことがコンプレックスに感じていたことでしょう。自分の孤独を誰にも言えず心の奥にしまい込んでいたのではないでしょうか。サヨナラも言えなかった親友トモやアキやヤグの思いを知ったハツキは、愛されていなのではなく、いつも大きな愛に包まれていたことを悟るのですね。これはとても大切なことです。心の中のコンプレックスを退治するのには、競争に勝つことではなく、愛されている感覚なんですね。人はチョットしたことで、重要な人から愛されていないという錯覚を持ちがちです。でもどんなに孤独な人でも誰かに愛されてきたからこそ、今があるはずなんですね。愛されいたことに気付けば、コンプレックスが吹き飛んで、本来にやりたかった目標に向けて、心の主力エンジンが点火されることでしょう。
そんな精神面で成長するハツキの気づきに感動しました。でも、結局ヤグは変わらないまま(^^ゞこんなことでいいのかなと思っていると、納得のラストシーンが用意されていましたのです。ラストでヤグの伝説のバンドが復活して、かっこいいところをハツキに見せ付けるのですね。
とにかくヤグに没入して弾けまくった大泉洋はもう雰囲気ぴったり!そして、ライブシーンも実にそれぽっく演じていて、散々頼りなさそうな姿を見せ付けたヤグのイメチェンぶりが素晴らしいのです。意外や意外で麻生久美子もギターを猛練習した結果、なかなかクールに弾きこなして、様になっていました。この時、麻生は妊娠していたとかで、母親としての優しさも滲み出ていたと思います。
特筆したいのはハツキを演じた三吉彩花。多感なハツキの気持ちを繊細な演技でよく演じていました。またカメオ出演ながらフリーマーケットの店番役でさりげなく登場する土屋アンナが抜群の存在感を放っていたのです。
麻生と大泉と三吉が本当の家族のようにはまっていて、見ているだけでハートウォームになってくる作品でした。何気ない家族ネタをここまで引っ張って感動ドラマに料理してしまう山本監督の手腕はなかなかのものだと思います。
そんな人生、最高。
タイトルのカタカナ表記を見た時から、これナニ?だった。
よ~く見てみたら、Good Morning, Everyone!のことだった。
うわ、ふっざけてやがる~!と思ったのもつかの間、
まず冒頭の一句にやられる。。すごく胸に響く言葉である。
ではその言葉が、この物語のテーマなのかと思うところだが…
自由気ままに生きる放浪の父親(本当の、ではない)ヤグ。
ヤグに寛大でロックが信条の、仕事に明けくれる母・アキ。
そんな両親の元ですくすくと育った(今までの)中学生・ハツキ。
ハツキの家庭に憧れを抱く親友・トモちゃん。
大まかなメンバーはたったこれだけの、名古屋発・家族ドラマ。
正直、大泉洋は「水曜どうでしょう」からのイメージが強すぎて、
今までのどのドラマも映画も(あの探偵映画も)う~ん^^;だった。
俳優としては巧いのだろうが、キャラが強すぎて笑いに繋がる。
彼の個性をどう巧く封じ込める(演技者として)かがポイントだと
今までずっと思ってきたのだが、今作ではしっかり彼が活きた!
うざくていい加減でどうしようもない父親ながら、
誰よりも娘を可愛がり(とはいえ放浪してたけどね)彼らの為に
せっせと料理を作ってはご近所との連帯をも結ぶ。
何処へ行っても、誰と逢っても、まず好かれる男なのである。
役得^^;とはこれなのか、と思うが、他の3人についても適材適所。
アキ役の麻生久美子は妊娠当時で相当具合が悪かったらしいが、
周囲に(監督以外)それを洩らさず、夜中の撮影もこなしたという。
こういうプロ意識が、ああいう演技表情をもたらしたのはさすが。
ハツキ役の三吉彩花には、何度も泣かされた。
最も多感な時期の女の子の心情を巧みに顕わし、ひねくれたり、
素直になってみたり、やたらしっかり者のところを鮮やかにこなす。
親友・トモちゃん役の能年玲奈との絡みには、泣かされっぱなし。
二人とも可愛い顔しておいて演技が巧い。
家族って何だろうの前に、親友って何だろう、とも考えさせられる。
おフザケとクールの間に絶妙にマッチするロックのスピリッツ。
普通の家庭に生まれ育ち、平凡な道を突き進めば幸せな人生か?
親が我が子にこうあるべき。と諭す将来とは、本当に正しいのか?
ハツキの担任がアキを訪問した時、この後アキがなんて言うのかと
心待ちにしていたら、なんと「そんな人生は、、、つまらん!」ときた。
あはは^^;そうきたかと苦笑する反面、私も同じ考えだなと思った。
まさか中学生で仕事しろなんて言わない。学校へ行くなとも言わない。
が、分かりきった思想を他人に諭され見下される筋合いなどない。
アキの暮らしぶり、学校への協力・理解が為されていないことを
担任は家庭に問題があるから。と(無言で)アキに訴えているわけだ。
(ヤグがのれんの陰で、どうしようオレ?って顔してるのが良かった)
いや、先生という職業も大変だな、とは思う。
職業柄正しい道へ生徒を導くことが彼らの信条なのだから仕方ない。
17歳で子供を産み(その前に相手とは別れている?)その自由奔放の
ツケが、今こうして親の責任問題としてアキに降るのも当然の結果。
なのでアキは担任に噛みつきはしない。しかし考えを曲げもしない。
(ロックだねぇ)
その後、ハツキを前にヤグの過去と自分の本心を吐露するアキだが、
ここでもあまりに正直で(辛い言い回しをするが)好感が持てた。
ホント、誰があんな痛い思いをしてまで産んだ子供を…って思うよ。
それはどの母親も子供に対して心から思っている本心だもん。
狭い世界で小さな一家族が織りなす地域ドラマながら、
それぞれの心情の掘り下げが見事で、後味スッキリ、彼らには彼らの
生き方があり幸せがある。子供にとって一番の幸せって何だろうと
考えた時、父母が仲良く談笑し、その中心に子供のいる姿が浮かぶ。
ウザい親だろうが、情けない親だろうが、大切なものを見落とさない
生き方は、必ず子供にも伝わっている。それって肝心だよね、ヤグ?
観終えてみたら、ここ一番の邦画の快作。年末に観れて良かった!
実は自分の母親が愛知県出身で(名古屋じゃないけど)、
所々で聞き覚えのある方言にはかなり笑えた。特にあのオバさん^^;
(ヤグカレー次回のどうでしょうで是非作って!フランべもしてねー!)
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