「フワフワとした空気の悲劇」英雄の証明(2011) 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
フワフワとした空気の悲劇
シェイクスピアが約400年前に書いた戯曲を現代に置き換えて映画化。
なんというか、お話が全然古びてない。正に今の時代の話じゃないかと思う。
いや、いつの時代に置き換えても通用する話なんだと思う。
邦題が「英雄の証明」となっているが、この映画のテーマは「英雄」ではないと、私は思う。
この話の中で強いのは、英雄よりもむしろ民衆だ。
民衆の情緒を基盤とした場の空気が政治を左右していく。
それに翻弄される将軍の哀れなことよ。
国を動かすのは民衆の人気や情緒や空気…一言で云ってしまえば衆愚政治の悲劇を描いている。
我こそ正義と信じて疑わず声高々に叫ぶ群衆の哀しきことよ。
自分の真の思いが民衆に全く理解されない将軍の怒りをレイフ・ファインズが渾身の演技で魅せる。
この戯曲を21世紀にチョイスした監督としてのレイフ・ファインズの胆力も、もっと評価されて良いと思う。
撮影が「ハート・ロッカー」のバリー・アクロイドという点も作品にとても合っていた。
そして、時代を超えて、社会とは何ぞやと観客に問いかけるシェイクスピアが、なにより凄い。
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