「どこまでもこんがらがる事件と思惑」別離(2011) だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
どこまでもこんがらがる事件と思惑
初イラン映画。京都シネマ名画リレーにて。
イランとイラクの差を全然理解してなかったけど今度こそ覚えられそう。この映画には関係ないですが。
イラン、シーア派、ペルシア人、ペルシア語、テヘラン。
イラク、スンニ派多数、アラブ人・クルド人、アラビア語、バクダット。
イランはとてもイスラム教的に保守で厳格と思っていたけれど、主人公夫婦は割とそうでもなさそう。奥さんスカーフ緩めだし、足まで覆う黒い服着てないし。娘の将来のために海外へ移住しようという位なんだから、英語習えとかゆってるし。信仰への熱量に個人差があるのだなと、当たり前なんですが、改めて思いました。
割と裕福な主人公一家と、夫に内緒で働かざるを得ない介護人として雇われる妻の一家。階級差に起因する(と私は思った)人生観の差が、ありがちな出来事を人生をひっくり返す大惨事に発展させてゆくその過程が、わー、ありそうありそう…と思ってとても身につまされました。
介護妻は妊娠中なのに、夫が失業中なので働かざるを得ない。
でも夫は妻が働くことをよく思わない。なので夫に隠れて働きに来ている。
介護妻の宗教観は、貧しいから狭い認識しか持てなくって、その中で正しくいたいという真面目さから、コーランに忠実に!というところにしがみついちゃうのかなーと思いました。この妻は何も悪くないんだけど、神様への忠誠をそこだけ曲げて、示談金受け取ったらよかったのにって思ってしまいました。
あと、おじいちゃんを追っていって車にはねられたならばなぜその日に雇い主に報告しなかったんでしょう。そこをやってたらよかったんでは?
まあ、一番選択肢の少ない介護妻をせめるのはやっちゃダメなんだけど、そう思ってしまったのが正直なところでした。
主人公夫妻の夫は良くないです。最初から嘘ついてるし。もちろん介護妻が勝手に外出したのは良くないけど、いきなり泥棒扱いしたり、やりようはあったはず。その上娘に嘘をつかせるなんてさ。ダメよ。
介護妻の夫はもっと嫌。カッとなりやすくて借金まみれで一年無職でさ、子供仕込む前に金稼げよ、妻を働かせたくないとか言ってないでさ。そんなイスラム世界の夫の典型主張をするにはまず稼いでからやん。
主人公夫妻は結局離婚し、娘はきっと両親に失望したと思います。どっちについていくのか、わかんない結末でしたが、消極的にお母さんを選ぶかなーて思いました。
主人公夫妻の妻は、、、
どうなんでしょ。私は最初からイスラム世界とは違う文化にいて、イスラム世界で暮らすのはやだなと思っているから、移住を強行したい妻の気持ちが一番自分に近いんですが、うーん。全編通して見ると、全面的に肩を持とうという気にはならなかったです。