「観るな!!(フリじゃねーぞ)」セルビアン・フィルム MAKOさんの映画レビュー(感想・評価)
観るな!!(フリじゃねーぞ)
本当に観るな。
一体なぜこの映画が今再上映されてるのか。
世に胸糞映画と言われてるモノは数あれど、この映画に比べればどれもかわいいものだ。
ジャンル的にはトーチャーポルノと云うヤツにあたるのだろうが、この映画の前では「ホステル」も「屋敷女」も「マーターズ」も霞む。
「SAW」なんてディズニー映画だ。
何故ここまで云うのかというと、自分は10年以上前にこの映画を観てしまい、未だに後悔しているからだ。
当時ホラー映画をアホほどレンタルで観ていた自分は、あらすじを見たうえで、20禁!?こいつはエロそうだわい。と好奇心が3割と下心7割で借りて家で観た。
で、激しく後悔した。
こんな非道い映画が有っていいのか?
何故こんな人の倫理感を破壊する様な、映画の倫理観の限界まで破壊する様な映画が作られたのか。
セルビア共和国という国はセルビア王国としてオスマン帝国から独立して以降(以前も)戦争と内戦と紛争を100年以上繰り返してきた国のようだ。
で、この映画が公開される4年前、散々内戦を繰り返してきたセルビア属するユーゴスラビア連邦は崩壊した。
この事で映画制作者たちは相当な制約から開放されたのだろう。作りたくても自分たちの望む映画など作れなかっただろう。きっと作りたくも無いプロパガンダ映画も作らされた事だろう。
この映画はきっと制作者たちの怒りの固まりをフィルムに塗り付ける様に出来た作品なのだ。
"この映画は確かに非道いが所詮作り物だ。"
"けどアンタらもっと非道い物見て来ただろう?"
"もっと非道い事してきただろう?"
だからこの映画には「セルビアの映画」
なんてタイトルが付いているのだ。
この作品は本当にトンデモなく非道いのだが、映画としての完成度はかなり高い。
映像、音楽、編集、役者の演技。
そして極悪極まりない脚本だって、ストーリーの真実が明かされるクライマックスや、救いの全く無いラストのオチもガッチリ練られたものだろう。
けどだからって観るな!
一生観なくていい映画というのは本当に有るのだ。
映画で一生物のトラウマ体験がしたい!
という頭のネジ抜けて締め直す気も無い人にだけ、オススメ。