劇場公開日 2012年4月21日

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「ネットで顔と名前を予習してから観に行くことを薦める」裏切りのサーカス マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ネットで顔と名前を予習してから観に行くことを薦める

2012年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

スマイリーのゲイリー・オールドマンがいい。
最初、金縁眼鏡で登場し、上司のコントロールとともにサーカスを追われるように去る。無口で冴えない印象を受ける。

やがて政府高官レイコンから極秘に特命を受け、二重スパイ〈もぐら〉の捜査に乗り出すスマイリーがまずやったのはメガネの新調だ。太い黒縁の眼鏡の奥から見つめる目は意志の強さを感じさせる。抑えた静かな物言いも、言葉は明確で妥協を許さない。

現在と回顧シーンの区別も、眼鏡のフレームの違いに注意すれば区別がつく。

徐々に〈もぐら〉を追い詰めていく過程が緻密で張り詰めたものがあり面白いが、人物相関が頭の中で組み上げられないと、かなり難解なストーリーだ。
たぶん、もう一度観たくなるだろう。
話の組み立て自体は丁寧に段階を踏んでいて、「ぼくのエリ 200歳の少女」のトーマス・アルフレッドソン監督の演出により一段ずつ階段を昇るように謎が紐解かれていく。それでも、登場人物の把握に追われてしまって話に着いていけなくなることがあるのだ。
ストーリーに没頭できるよう、事前に登場人物の名前と顔をさらっておくといいだろう。観終わってわかるが、どの人物も重要だ。それぞれにいい役者を配している。

翻訳(字幕)も難しいところだろうが、もう少し解釈しやすくする工夫がほしいところだ。たぶん、観るのが2回目だったら今のままでいいのだろう。きっと説明過多でくどくなるに違いない。字幕をつける作業は単なる翻訳ではないだけに、今作のように複雑なストーリーでは、そのさじ加減が大変だと思う。

徒労感のある内容に対し、どこかほのぼのとしたエンディングは、気持ちよく劇場をあとにすることができる。

マスター@だんだん