「冷戦下で繰り広げられる謀略の数々を静かに綴る重厚なポリティカルスリラー」裏切りのサーカス よねさんの映画レビュー(感想・評価)
冷戦下で繰り広げられる謀略の数々を静かに綴る重厚なポリティカルスリラー
東西冷戦下のMI6、通称”サーカス”のリーダー、コントロールは内部にKGBのスパイ「もぐら」がいると確信。情報収集のために部下をハンガリーに派遣するも殺害されてしまい、彼の右腕スマイリーとともに責任を取って引退する。若手諜報員ターは「もぐら」の情報を持つKGBのイリーナと接触、彼女を亡命させようと画策するがサーカスに連絡した途端にKGBに連れ去られてしまう。「もぐら」の存在を確信したターの上司ギラムはスマイリーに「もぐら」探しを依頼、スマイリーは、引退後死去したコントロールが独自に「もぐら」を追っていていくつか手がかりを遺していたことを知る。容疑者は4人の幹部、ティンカー、テイラー、ソルジャー、プアマン。スマイリーは彼らの身辺を洗いながら自身の過去に深く関わる事実に近づいていく。
アクション要素が殆どない地味なスパイ映画。静かに繰り広げられる騙し合い、凄惨な拷問と暗殺が色褪せた色調の中で繰り広げられる。時代考証が徹底されていて小道具のひとつひとつに70年代の風情が宿っています。『ぼくのエリ』で80年代の空気感を再現し、美しい雪景色のストックホルムで鮮血に塗れた恋物語を紡いだ監督トーマス・アルフレッドソンの確かな手腕に酔える重厚な作品でした。
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