鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言

劇場公開日:2012年2月4日

解説・あらすじ

法隆寺の昭和の大修理、薬師寺白鳳伽藍復興工事などに携わり、飛鳥時代から続く寺院建築の技術を後世に伝えることで「法輪寺の鬼」「最後の宮大工」と呼ばれた西岡常一(1908~95)の生涯に迫ったドキュメンタリー。宮大工の技術は言葉ではなく体で覚え、長い時間をかけて技術を盗むものとされていたが、西岡は自身の経験と培ってきた技術、感覚を若い世代に言葉で伝えようとしていた。記録映像や西岡にゆかりのある人々へのインタビューを交え、西岡が言葉に託した思いを探る。

2011年製作/88分/G/日本
配給:太秦
劇場公開日:2012年2月4日

スタッフ・キャスト

監督
山崎佑次
企画
小林三四郎
プロデューサー
植草信和
朴柄陽
音楽
佐原一哉
撮影
多田修平
編集
今岡裕之
録音
平口聡
タイトル
上浦智宏
聞き手
青山茂
中山章
山崎佑次
ナレーター
石橋蓮司
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フォトギャラリー

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(C)「鬼に訊け」製作委員会

映画レビュー

4.5 【”自分の命を木に打ち込む。”今作は、宮大工西岡常一氏が末期がんを患いながら、薬師寺西塔再建に取り組む様を記録した、ムネアツドキュメンタリ―映画である。】

2025年7月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

幸せ

ー 私事で恐縮だが、私の書架には西岡常一氏の著作が2冊ある。
  「木のいのち木のこころ」そして、今作で映された西岡常一氏の名言の多くが記された「木に学べ:法隆寺・薬師寺の美」である。
  購入した動機は、建立された薬師寺西塔を観に行った際に、氏の名を知ったからである。
  その本の中では、今作でも氏が語る”木でなく、山を買え。”と言う思想と、木の特性を知り尽くした言葉の数々や、且つて宮大工の仕事には欠かせなかった”槍鉋”を再現した過程などが綴られ、大変に面白かったモノである。
  文章は平易であるが、そこには”モノづくり”に命を懸ける男の生き様が記されていたからである。

  今作でも、それまで代々仕えていた法隆寺との建築に対する考え方の相違(鉄を使わない、コンクリートを使わないと言う西岡氏の信念:そして、それは現在では建築学者も認めている事であるが、当時は違った。)により、法隆寺を去り、薬師寺の宮大工で生きる苦悩の決断が描かれる。

  又、林業が衰退した日本では、求める気が得られないという判断で、台湾まで出かけ木を調達する姿。その際に口にする木の特性の見分け方を述べる姿。

  驚くのは、西岡氏の弟子に対する接し方、声の掛け方である。声を荒げる訳ではなく,肝要なポイントを端的な言葉で伝える姿に驚く。だが、弟子たちは西岡氏の事を怖いというのである。
  それは、氏が語るように”失敗したら、切腹する。”と言う想いが伝わるからであろう。ー

<今作を観ると、本気でモノ作りをする男の凄さと神々しさにヤラレルのである。今作で描かれる内容は勿論面白いが、業種は違っても本気で仕事をする姿勢や後進を育てる姿勢など、随分教えられるドキュメンタリー映画である。>

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NOBU

3.0 匠の心得

2023年9月12日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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odeonza

4.5 西岡常一がカッコよすぎて

2021年8月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

西岡という偉人の言葉を、映像化して残してくれてありがとうという気持ち。。
最高すぎるので全人類観るべきだと思う。

私の持論。人生重ねて重ねて出した結論、っていうのはたとえ同じこと言っててもそりゃあ重みが違う。年寄りのそれがいかに自分のものとは違っていても、若者のそれより断然尊重されるべきだとは思うのですが、最近の風潮はどうも違いまんな。
ということで行ってきました。

宮大工・西岡常吉の記録。
木を加工する作業、音もビジュアルもホントに心地よくて、槍鉋かけるシーンとかずっと観ていたかった。
厳かな気持ちになりました。
1000年っていう長ーいスケールで考えると、自然に逆らうなんざ愚の骨頂やな、と心から思った。いかに自然の法則に沿い、自然の力を利用するか。
ベストな建て方をすれば、建物としては木が最も長持ちする材料になる。
その方法を先人から受け継ぎ、探求し、時代遅れと言われようと頑固に実践し続けた西岡。

伝えられなかった知恵すらも研究し、現代に活かそうとする彼の凄まじい努力は、出来上がった建造物に現れている。
穏やかな爺さんに見えるけど、実践と知識に裏打ちされた芯の強さと鋭さが時折覗く。

晩年、入院生活が続き棟梁の職を辞すことを願い出たが、薬師寺は受け入れなかった。棟梁として棟梁のまま死ねることを知り、鬼の西岡が男泣きに泣いた、というエピソードにぐっと来た。

長いスパンで歴史から学ぼうとすれば、あらゆる答えがあるはずだ。と思える説得力が、本作にはあった。

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sannemusa

4.0 自分の魂を木に打ち込むつもりで、仕事をやってもらいたい

2020年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、VOD

数々の金言を残す名棟梁。この人なくして、法隆寺金堂の大修理も、薬師寺の再建も成し得なかった。ご自身が、伝統を受け継ぎ、次代にバトンを渡す役割であることをよくご理解されていることが、若者たちへの指導姿勢からうかがえた。仕事に厳しく謙虚である職人は、その姿が生きた教科書である。

なお、薬師寺西塔初層の釈迦四相像がときおり特別公開されます。そのブロンズの素晴らしいこと。参拝の際は、ぜひその機会にあわせてをオススメします。

※2023.4.23.恵比寿にて再鑑賞。

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栗太郎

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