「今ここから脱したい、もがく人に見てほしい」アリラン トコマトマトさんの映画レビュー(感想・評価)
今ここから脱したい、もがく人に見てほしい
キム・ギドクに関心のない人が見た場合、どう感じるだろうか。
国際的に評価を得ているキム監督は、分かりやすく説明するなら「韓国の北野武」といっていいだろう。
商業的に大ヒットする作品は撮らずとも、玄人筋には受けるし、「問題作」と呼ばれる作品も片手に余る。
その監督が映画=作品を撮れなくなって、引きこもり状態になったという。
監督自身の来し方を、ドキュメンタリータッチで腑分けしながら、ファンタジー的要素もちりばめた作品だ。
クリエーターが、物を作り出せなくなり、追い込まれる姿を描いているわけだが、それが見る物に熱く伝わる。
監督のように功成り名を遂げた人間でも引きこもってしまうのだが、もっと小さな理由で引きこもっている凡百の人間にも、そこから脱しようとしてもがくキム監督には共感できるのではないか。
評者はキム監督と以前会ったことがあり、「春夏秋冬 そして春」などは好きな作品の一つだ。それだけに、この映画にはジーンと来る物があった。
これもまたもうひとつの韓国映像作品なわけである。
平日昼間の渋谷シアターフォーラムの観客は10人にも満たなかったが、キム監督の映像宇宙にみな衝撃を受けただろう。
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