「一緒に生きるために。」ひまわりと子犬の7日間 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
一緒に生きるために。
例えば家族に見放された老人が、施設で生活していても、
税金のムダ遣いですから殺処分しましょう、とは言われない。
しかし家族に見放された老犬には、それが下される。
放し飼いされた大型犬が人間を噛んだ、という事件。
繋いでおかなかった飼い主の罪は、その犬に着せられて殺処分。
そもそも犬の本質を分かっていない飼い主が、このくらい大丈夫
だろうとタカを括り、危険な放置をした結果が招いた悲劇なのに、
加害者の罪は犬が負わされる。彼らは何のためにこの世に
生を受けるのだろう。人間さまの罪の身代わり?癒すための道具?
空前のペットブームで、店では十○万円の子犬が売買されている。
十○万円の癒しを与えてくれた彼らに、十○万円の医療費がかかる
ようになった途端、もう面倒は看れません。なんてよく言えると思う。
自分がそうされる未来を覚悟しておけよ、といいたい。
家族家族といいながら、所詮ペットだから。と見下している人間が
いかに多いかを思い知らされた。そんな人間に飼われたくないのに、
(運の悪い)彼らは大枚はたいて買われていく。それが現実である。
今作のことは公開前のTV番組と、原作者のブログで知った。
このひまわりという犬の話は実話で、産まれたばかりの子供と
一緒にこの保健所に保護されていた期間に起こった奇跡だそうだ。
鑑賞済の方は、この話のどこが奇跡だ?結局職員さんが引き取った
話じゃないか。と思うかもしれないが、作中でも説明があった通り、
子供を守るために人間に懐かなかったひまわり(母犬)に対して、
規則では譲渡を固く禁じている。つまり引き取る相手が誰であろうと、
ひまわりが人間に懐いた(噛まない)ことを自身で証明できなければ、
あそこで、殺処分されていたのだ。(乳離れ前の子供と一緒に)
子供を取り上げられてなるものか!と踏ん張る母心と、
自分だって楽になりたい、人間に愛されたい!と願う犬の本望が、
寸でのところで彼らの死を回避させたのである。
原作者の方も、まさかこういう結果になるとはと驚き、もうダメだ~
と諦めた自分を恥じた。と書かれている。
作中にもブログにも名前も顔も出されていなかった(堺雅人が演じた)
その職員さんの素顔と名前がTV番組では紹介されていた。
顔を見た途端、あーこの人か!と、ひまわりはこの人に逢えたことで
心底人間を見直したんだろうと、そう思えるほど素敵な方であった。
撮影当時すでに重病に苦しんでいたひまわりが、
最期の最期の最期まで彼に伴われていたことは、嬉しくて堪らない。
もちろん、すべての犬がこんな風に救われているわけではない。
期限通りに殺処分されてしまう(引き取り手が見つからなかった)
保護犬たちのほうが多いのだ。心ない人間が手放した罪で、彼らが
こんなことになるのなら、彼らを救えるのは(もちろん一番は飼い主
のモラルだが)心ある人間でしかない。各地でこういった保護施設が
開設されているらしいので、もし犬を飼いたいと思っているとしたら
是非そういった施設をまず覗いてもらえれば、と思う。犬も人間と
同じで互いの相性があるから(爆)まずはお互いを知るところから…
ここまで書いて思うのは、やはり冒頭の飼い主だったおじいさん、
誰かにキッチリと犬を引き渡してから、施設に入るべきだったのだ。
見捨てられて野犬になってしまう飼い犬たちの悲劇を今作で学んで、
動物の命がどう扱われるべきか、飼う前にしっかり話し合ってほしい。
映画の感想というより、飼い主の心得みたいになってしまいましたが。
ひまわりを演じたイチ、例えるなら大竹しのぶ級の女優犬だそうで^^;
かなりの名演が多数見られます。匍匐前進、涙を感じて見上げる表情…
犬の気持ちを代弁すると、すべてが彼女の演技に込められているはず。
映画の完成度は個人的に普通だけど、多くの人に知ってほしい現実。
(可愛い子だって歳をとる。でも愛しさは変わらないよ、家族だから)