アルゴのレビュー・感想・評価
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実話通りないからこその面白さ。
ノンフィクションを謳う映画は、どれだけ史実の再現を売りにしていても絶対に脚色されている。そもそも現実がそのまま2時間程の上映時間に収まるわけがなく、ひとつのアプローチとしてはそれでも愚直に現実を映し出そうと苦闘するか、でなければ実話のエッセンスからどれだけ面白い映画に仕上げるかの二択だろう。
『アルゴ』は、CIAが偽のSF大作をでっち上げ、イランで潜伏中のアメリカ大使館職員を映画スタッフの振りをさせて国外脱出させたウソみたいな事件の映画化だ。そのためにはハリウッドの映画人も協力し、ちゃんと業界紙にフェイクの映画の広告まで打っている。
ただし、どれだけ映画みたいな話でも、そのまま撮って映画として面白いかは別。実際原作を読むと、技術畑の筆者(ベン・アフレックが演じた主人公のモデル)が専門的かつ技術的な考察に多くのページを割いていて、手に汗握るような局面はそれほどない。
監督主演のベンアフは、臆面もないくらい堂々と、王道エンタメとして演出している。だからこそクライマックスはスリリングで超盛り上がるし、逆に言えばウソっぽい。でも実話なんだから本当にあったことと思い込むよりも、これだけ面白いんだからベンアフはいい監督だなあ、と捉える方が、史実を勘違いすることもなく、映画も楽しめてちょうどいい気がする。
実話に基づく、第一級のサスペンス・ドラマだ。
1981年のイランアメリカ大使館人質事件中に、カナダ大使館に退避した米国外交官6人を、ニセSF映画『アルゴ』をでっち上げ、ロケハンと偽って、イラン国外に救出する作戦を描いた、戦後現代史のサスペンス・ドラマ。
この作戦は「カナダの策謀」(Canadian Caper)と呼ばれる。本作は史実に比べ、カナダ側、特にテイラー大使の役割を軽視しているとの批判があった。とはいえ、カナダから依頼されたCIAが、実際の作戦遂行にあたっている。
事件当時の米国とイランの状況など、鑑賞前に背景知識があったほうが良いかも。テンポが良く、最後まで飽きずに見ることが出来るし、知性にあふれた野心的な作品だ。
実録ドラマらしく、刺激的で緊張感がある。奇抜だが命を懸けた救出作戦を、分かりやすい語り口ながら、実にリアルに描いた、第一級のサスペンス・ドラマだ。
3.7緊迫感半端ない
ずっと昔から見たかった映画をやっと見た。
よかったー!名作と言われてたので安定感抜群なんだけど
最後の最後まで緊迫感があった。緊迫しすぎて、早く送りしそうになったし、
シュレッダーじゃなくて塵になるまで燃やさないとだめだなと怖くなった。
こうしたヒストリー、イランとアメリカの対立の歴史など、今のイスラエル、イラン、アメリカ、パレスチナの構図で見てもかなり興味深く歴史モノとして個人的に評価が高く感じた。
空港での脱出劇のギリギリセーフ的展開がエンターテイメントとしてもやり過ぎに感じ…
この映画は
アカデミー作品賞受賞作でもあるし、
キネマ旬報では、選考委員による評価は
第6位ではあったものの、
読者選考では見事第1位に選出された作品
だったので、TV放映を機に再鑑賞した。
史実からは距離を置いた
土壇場での作戦中止指令や、
搭乗券確認がかろうじて間に合う場面、
また、
新政府軍による身元解明のエピソード等を、
作品の盛り上げ策として、
作戦期間中のほぼ全ての危機要素を
空港での脱出劇に集約した脚本は、
ある意味、エンターテイメントとして
全編緊迫感溢れる展開に導いてはいた。
しかし、一方で
空港での脱出劇のギリギリセーフ的展開への
その集約的改変そのものが、
逆にエンターテイメントとしても
ある程度は必要なリアリティを逸し、
作り物感を助長した印象になってしまった
のが少し残念な気がした。
そんな作風の中、
偽企画映画「アルゴ」の偽制作過程で、
「SW」と「フラッシュ・ゴードン」を
掛け合わせたようなキャラクターを
着ぐるみやポスター・絵コンテ等で
見せてくれたのは、映画ファンへの
エンターテイメント的ユーモアとして
嬉しい対応に感じた。
冗談みたいな救出作戦
癌になったパーレビをアメリカが治療のため保護した事からイランは混乱し、暴徒化したイラン人がアメリカ大使館に乱入した。60名もの大使館員たちは拘束された。ベンアフレック扮するトニーメンデスは、人質奪還のプロとして意見を求められた。
そら恐ろしい話だし、人質の大使館員たちはさぞ恐ろしかった事か。しかし冗談みたいな作戦が本当に救出作戦になり得るのか。ましてや捕まったら殺されるしかない作戦を実行するとは自殺行為だね。それにまさか作戦中止命令が出ようとは。イラン出身女優のサヘルローズさんがイランの広報をしているけど、やっぱり恐い国だと思わざるを得ないね。
史実とは!
史実であること、ベン・アフレック監督主演であることで鑑賞。ベンアフの魅惑的なアゴがお髭で見られなかったが、お髭もなかなか似合っている。
しかし、実際にこんな映画の制作に見立てての救出作戦なんて、よく思いついたなあ。物語として観たなら、そんな馬鹿なぁ〜で済んでしまうが、事実なんだから馬鹿な話ではないんだ。脱出出来た事は事実として分かっていても、街中でのやり取りや、空港でのギリギリ搭乗出来たところなど観ていてハラハラしたし、なかなか面白かった。
俳優としてだけではなく、監督制作としても才能ありですね。
静かなのに、ハラハラドキドキ
9年ぶりに見たので、ほぼ覚えてなく新鮮。
中盤は話が停滞気味で眠気を誘うけど。
終盤の場面展開から、ガラガラドキドキ。
救出劇なのに、静かなのがなお重さがあるし。
主人公も熱血漢・ヒーローっていう感じでもないのに。
その辺、うまくできてました。
いい映画は何回見ても、いいのです。
サスペンスものとしても第一級
<映画のことば>
「イメージを変え、旅券の写真と同じにしなくては」
「結婚式以来の緊張だ」
「結婚と違って失敗できない」
<映画のことば>
「銃で脅されて、偽装が通用するのか」
「偽装だけが、銃から身を守る」
<映画のことば>
「長官が君に会いたいそうだ」
「クビの通告かな」
「CIAスター勲章の授与だ。諜報活動における最高の功労賞を受けるんだよ。授賞式は14日だ。」
「一週間延ばせれば息子を呼べる」
「作戦は機密扱いになった。授賞式も極秘だ。誰も事実を知ってはならない。」
「勲章を授与し、取り上げるのか。」
「そうだ。喝采を求めるならサーカスへ。」
いかに中東とはいえ、そろそろ冬を迎えそうな時期に自転車で国境を目指すサイクリストを装うというのも、いががなものとは思いますし、さりとて政情不安定なときに、わざわざ外国から教員を招聘するというのも、いかにも不自然。そうすると、差し引きで、本作の「映画作戦」が残ったようてすけれども。
その点、映画製作だと、ロケ地にも縛り(限定)が出てくるでしょうし、製作スケジュールの都合上、政情が不安定だからといって、あながちロケを延期することがてきるわけでもない…。
そう考えると、本作の「アルゴ作戦」も、そう突飛な思いつきでもなかったようにも思われます。
(あくまでも、ゴールからの逆算の考え方ですけれども。)
映画作品としては、脱出実行に当たっての6人の動きとイラン側との攻防が半端なく、たっぷりの緊迫感・緊張感を味わうことができ、サスペンスものとしても第一級の作品であったといえます。
そして、これだけの作戦を成功に導いても、あくまでも縁の下の力持ちに徹しなければならない諜報員という仕事の一端も、ちらりとですが、垣間見える一本になっていたと思います。
佳作であったと思います。評論子は。
(まったくの余談)
<映画のことば>
「映画化?脚本家組合は、ホメイニ師より怖い。」
あえて16ミリで撮影し、編集で35ミリにブローアップした画面のざらつき
(13.1.25劇場鑑賞)
1980年、CIAの諜報員が、反米高まるイランから6人の米外交官を国外脱出させるために、奇想天外な作戦を断行する。1980年に勃発した在イラン アメリカ大使館占拠事件の史実に基づく物語。
傑作。
このひとことに尽きる。
ハラハラドキドキのエンタテイメント性も然ることながら、中東に象徴される善意によるスタンピードの恐ろしさ、それを引き起こした世界の警察たるアメリカの功罪に関する内省、更にはひとりの男の再生ドラマ、偽映画をモチーフとしたハリウッドへの冷笑、そしてその背景にあるベン・アフレック自身の栄光と没落などなど、色々なことが、実に緻密に計算され、それぞれが干渉せずにそれでいて相乗的に丁寧に描かれている。
セットや衣装、時代考証の秀逸さはもちろんのこと、1980年代の風情を出すために、あえて16ミリで撮影し、編集で35ミリにブローアップした画面のざらつきが観客を支配する。
監督・主演のベン・アフレックがとにかくカッコいい。女房子供に逃げられた、脱出専門のCIA諜報員。大胆な発想、緻密な計画、愛と信念に満ちた行動が三位一体で溶け出し、無表情でぼうぼうのひげ面が口数少なく、だが雄弁に物語る。本作で、次のイーストウッドを狙える人材、との評価を獲得した。
6人の外交官を描き過ぎなかったところが素晴らしい。更に、6人を匿うカナダ大使を演じたヴィクター・ガーバー、ベン・アフレックの上司役のブライアン・クランストンがいぶし銀のいい味出してる。
作品賞や助演男優賞など、いくつかの部門でノミネートされているアカデミー賞。どれかひとつでも、取らないかなー。
(19.9.14 二度目)
人間は自分と違う人間が怖い。言葉、信仰、服装、人種、街並み。侵してはならない領域があって、そのきっかけはアメリカがつくっていて、欧米人とは全く違う人々が忘我するほど怒っていて、その中で同胞を救出を成功させたCIAが賞賛される。2時間があっと言う間に過ぎるスリル満点の作品は見事の一言に尽きるが、少しだけ「なんだかな」と感じた、6年後の感想。第85回アカデミー賞で作品賞、脚色賞、編集賞を受賞とのこと。
あれ、これで終わり?
アカデミー作品賞も受賞している、実話を元にした在イラン米国大使館員の脱走劇。ハリウッド映画のスタッフに扮してイランから国外に出るまでを描く。ところどころで、バレてしまいそうでハラハラする場面が続き、緊張感があるものの、なんかすごく盛り上がるわけでもなく、あれ、もう終わり?という感じでした。脱出するメンバーの描写があっさりしてるので、あまり感情移入はしなかったな。
ハラハラドキドキしたいあなたへ!!
実話をもとにしていることもあり、
このハラハラ感は本物!!
心臓に悪い!!けどおもしろ!!
と思って2,3回視聴。
その後、実話のエピソードを調べてみると、
あれ、実際はここまで緊迫してない?
バザールとか本当は行ってないの?
と、あまり知りたくなかった情報がチラホラ‥
(詳しく知りたい方は「ARGO 実話」でググってみてください)
とまあ盛られてるにしろ、
ハラハラ感は楽しめるのでおすすめ!
冒頭10分、大使館機密書類処分が好き
冒頭10分に最大の価値がある
公開当初に視聴していたが
2021年アフガン崩壊で思い出し再視聴
やはり大使館の機密書類処分シーンが印象的
主人公の登場シーンがいい、テイクアウト容器が転がる部屋で、スーツのままベッドに突っ伏して寝ている中、電話で起床させられる・・・
美術、ヘアスタイル、ファッションに至るまで当時の空気感が感じられる
随所の色んな家電、古い電話がいいので注目してほしい
ハリウッドサインの老朽化が歴史に忠実だがインパクトあり
台詞回しがかっこいい
最後の作戦資料格納シーンが刺さった
昔見たときはそれほど面白く感じなかったが見返してみたら実に面白かった。
倒錯した「劇中劇」
政変の犠牲になった駐在大使を救う使命を帯びて、一見バカバカしいとしか思えない作戦を大真面目に遂行していくCIAエージェント。
その作戦とは、映画のロケハンに見せかけて彼らをスタッフになりすまさせ、国外に脱出するというもの。
こんなことが、本当に実行されたというのだから驚きだ。
映画は、ご存知の通り、高い評価を受けているので揺るぎないものに違いないが、個人的にはもう少し掘り下げて欲しかった。
例えば、なぜアメリカ人は処刑の対象になってしまうのか、拘束された6人はどういう立場で、なぜ動くことができないのか、そして、誰が(なにものが)彼らを追うのか。など、なんとなくぼんやりとしか理解できなかった。
ハリウッド映画は、国境を越えて様々な人に希望を与えてきた総合芸術だ。今作は、架空の映画が、文字通り人の命を救ったという「おとぎ話」なのだ。
よく「劇中劇」の形式で語られるストーリーはあるが、今作のように倒錯した「劇中劇」は前例がないであろう。
それが、批評家にうけた要因なのだろうか。
私は、楽しめなかった。
2013.9.27
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