「上司がやんちゃな部下をかわいい、という健気さ満開の映画」アルゴ しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
上司がやんちゃな部下をかわいい、という健気さ満開の映画
他人のゲームを横で見てて、プレイヤーの息遣いをよそに、
「ああ、ねむ~~」
そんな経験あるだろう。そんな映画。
他人のゲームに「ガンバレ~」って応援できる人は楽しめる。
映画の中の登場人物は危機迫る状況。作り手ベンアフレックも映画愛を振りまくのに必死。
アカデミーや映画ファンがコレを評価する気持ちはなんとなくわかる。
「ベン、映画好きじゃのう、ええやつよのう。」
上司がやんちゃな部下をかわいい、という健気さ満開の映画。
しかしオレは違う。
例え状況説明や映画愛を振りまかれても、ちっともドラマが無いので、登場人物は極めてステレオタイプにしか見えないし、アフレック監督はきっと「ミッドナイト・エクスプレス」や「遠い夜明け」のような過去の傑作へのリスペクトもあるだろうが、そのサスペンス性のみにリスペクトしているようにも思える。
実際、劇場満員(広島1月19日)の期待感バリバリの中、主人公がイランに乗り込むまでであちこちでグースカといびきが。
これは史実を丁寧に、とか、、意図的に起伏を抑えたと言うより、後半の破天荒な展開を描けているのに反し、ただだらだら作戦を説明しているだけに過ぎないからだ。
まあ、これはよかろう。
もっとも気に入らないのは、前日の急遽の作戦中止に対する主人公の決断がまるで描けていない点と、最大の緊迫シーンでこれまで作戦に否定的だった人物が窮地を切り抜ける働きをする伏線が描けていない点。
これでは、後半のサスペンスなど他人のゲームだ。
前半の劇場内を包むいびきと後半の観客の置いてけぼり感がハンパない。
けっこう貴重な体験をしたよ。
上映時間2時間ときいて、その中身のバランスが極端に悪いことばかりがめだち、描くべきものが描かれておらず、ラストのマンガのような展開だけが浮いて見える。むしろもっと上映時間を長くしたほうが救われたかもしれない。
そうしなかった点も上司としては
「興行のこと考えてるぅ(ハート)」
って、思えてかわいいのだろうか?
ベンさんのスイーツなオトコ映画愛の「ザ・タウン」のほうがまだ面白かった。
「スカイフォール」がオスカー候補になるかも、と聞いたとき、なにかの冗談かと思ったが、別の冗談が現実になり、ちょっと笑った。さすがに獲ることはないようだが、ノミニーはベンさんへの期待、ということだろう。