「国民のためならなんでもするアメリカ」アルゴ マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
国民のためならなんでもするアメリカ
当時のワーナー映画のオープニング・ロゴで始まる。
1979年に起きたイラン国民の暴動によるアメリカ大使館占拠事件。実録フィルムと新たに撮った映像が入り混じったオープニングは、どこまでが作りものか分からない精巧さで、大衆が押し寄せる怖さと、それをただ見守るしかない大使館側の緊張感がみなぎる。
そうした混乱の中、決断を下した6名が大使館を抜け出しカナダ大使の私邸がその身柄を受け入れて匿う。もし、逃走がバレて見つかれば、見せしめのために公開処刑されることが必至というのが本作の核になる。
襲撃を覚悟した大使館では重要書類を焼却またはシュレッダーにかけて処分するのだが、イラン当局は子どもたちを集めてシュレッダーから取り出した紙片を繋ぎ合わせる途方も無い作業をやらせる。徐々に大使館にいた職員の数が明らかになり、人質の数との相違が発覚する。子どもたちは紙片を繋ぎあわせ職員の顔写真を再現していく。
6人を国外脱出させるための有効な具体案が出せないでいる国務省と、実態を把握しようとするイラン当局との時間の勝負が、6人が無事助かったという事実を通り越して緊迫したストーリーを形成する。
話は一刻をも争う命懸けの脱出劇で実際にあった事。作りものではない怖さがある。にも関わらず、ニセのSF映画製作をでっち上げ、そのロケハンのスタッフとして6人を偽装するという、今から思えば嘘のような話は映画的な面白みを併せ持つ素材だ。
誇張した演出があるにせよ、実際にあったイラン脱出をここまでエンターテイメントに昇華させたベン・アフレックの監督としての手腕を見直す。
映画製作に信ぴょう性を持たせるため協力する「猿の惑星」の特殊メイク・アーティストのジョン・チェンバース(ジョン・グッドマン)、大物プロデューサーのレスター・シーゲル(アラン・アーキン)のコンビが楽しく、トニーの上司ジャック・オドネル(ブライアン・クランストン)の支援ぶりも小気味いい。