「聖書が元になったファンタジーですが、割と現実的な演出で、筋が通っていた。テーマ的にも、現代に通じるものがあると思う。」ノア 約束の舟 Push6700さんの映画レビュー(感想・評価)
聖書が元になったファンタジーですが、割と現実的な演出で、筋が通っていた。テーマ的にも、現代に通じるものがあると思う。
以前から、パニック映画の2大傑作「ポセイドン・アドベンチャー」と「タワーリング・イン・フェルノ」は旧約聖書が元だと思っていました。
ポセイドンは「ノアの箱舟」伝説、タワーは「バベルの塔」伝説です。
本作は、「ノアの箱舟」伝説を実写化するということで、そのままというより、「ポセイドン・アドベンチャー」的なものを期待して見にいきましたが、聖書のエピソードに近いような印象でした。
聖書って、神の意志と、人間の意志との、せめぎ合いみたいなものが、延々と続くような印象がある。
神の意志を伝える→人間は最初は従うけれど、結局裏切る→ひどいことになる→神の意志を伝えるに戻る
のルーティンワークが延々と続く感じです。
神の存在はフィクションだとしても、神様的なことは、世の中には必要だと思います。
神様的なことがなくなってくると、神の意志を伝える→人間は最初は従うけれども、結局裏切る→ひどいことになる→もっともっとひどいことになる→さらにもっとひどいことになる、ということになる。
すごく古いストーリーではあるけれども、テーマ的には、神様的なことがほとんどなくなり、現実に災害等で「ノアの箱舟」伝説的なことが起こりそうな現代にすごく合っている。
ファンタジーではあるけれども、割と現実的な演出で、筋が通っていて、見やすかった。
それから、家族よりも、神の方が大切、家族を殺してでも、神の指示を守ろうとするところがよかった。
本来聖書では、これが正しい、となっているはず。
でも最近のハリウッド映画は、家族がなにより大切、家族のためならなんでもする、みたいになっているのがちょっと気になっていた。
個人的印象ですが、神様的なことがなくなると、自分だけになってしまい、自分さえよければ、自分の利益のためならば、他人はどうなってもかまわないというということになる。
これではあまりにもひどいということで、せめて家族くらいは大切にしようね、他人にも家族がいるのだから、ちょっと遠慮してね、くらいのところまでは考えているかもしれない。
でもこの考え方だと、家族のいない人はどうなってもかまわない、みたいになってしまうのが残念。
同じような映画で「2012」(2009)があるけれど、「2012」はこの考え方が全面に押し出されている。
「2012」とセットで見て、見比べると面白いと思う。