「離れ離れになった家族の哀しみを背負う男」プンサンケ kakerikoさんの映画レビュー(感想・評価)
離れ離れになった家族の哀しみを背負う男
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力尽きた眼前に広がる一面の空。「生まれ変わったら、あの鳥達のように、自由にどこにでも羽ばたいていける、そんな世界に生きてみたい」と彼は思ったに違いない。
南とも北の者とも正体不明のプンサンケと名乗る男。自らの命の危険を犯してまで「運び屋」として、統一戦線を行き来するのはどうしてなのか?劇中、彼が一言の言葉も発しないのは興味深い。怒りも、哀しみも、愛さえも。その代わり、目で、手で、時には慟哭で以って全身を震わせ、彼の心の内を私たちは汲み取ることができる。
タイトルのプンサンケ(豊山犬)は北朝鮮の狩猟用犬種で、獰猛で力強く、一度噛んだ獲物は放さないのだとか。
終盤、彼が復讐の手段として、密室に南北の敵対する人員を閉じ込め、銃を投げ込み殺り合わせるシーンは、すさまじい。憎しみや不信、欲望の塊化した人間が、闘犬そのものにみえてしまう。
そして、プンサンケは、再び南北に分散された家族の写真やビデオメッセージを届ける。亡き愛する人のもとにもあるものを届けに。。
キム・ギドク監督がシナリオを手がけたことでも充分、話題性がありましたが、主人公を力演したユン・ゲサン君の、彼の代表作の一つになるであろう作品と個人的に満足しています。
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