「この映画は日本では理解されにくい」プロメテウス 猫耳堂静風さんの映画レビュー(感想・評価)
この映画は日本では理解されにくい
対したネタバレではありません。
この映画の根源は宗教にあります。
色々なサイトのレビューに「伏線がつながっていない」というような内容を見受けられましたが、宗教的観点から見ると全部つながっています。
この映画のテーマとして考えられるのは、おそらく「神は何故人を作ったのに、最後に滅ぼすのか? 」でしょう。
この映画は完全な「エイリアン」の前日譚であるばかりでなく、初作「エイリアン」の謎を全て解き放ちます。続編は別ですが……
「エイリアン2」について、「エイリアン」のリドリー・スコット監督が続編とは認めないと怒った意味も分かりました。「エイリアン」は宇宙規模の宗教譚だったのですね。
テーマの答は最初に出てきます。主人公の父の言葉「(人間が死んだら)天国とか楽園(という所にいく)。素晴らしい場所だ」
そして途中で出てくる主人公の言葉「(神はいなかったね。彼らが創造主だといわれて)では、彼らを想像したのは? 」
エイリアンを兵器として作り出し、エイリアンを生み出す黒い液体は人体を溶かして、新たな生命の元となる。主人公の彼氏は新たな生命の元になりかけていた。そんな液体によって産みだされた生物兵器エイリアン。
兵器でありながら、新たな生命。全てを破壊した所でおそらくエイリアンは死滅し、生命の元になるんだろうと思う。セリフにもある。
「破壊して新しく作る」
わたしの見解だけど、最初に出てくる様々な古代文明に共通する印。これはそれぞれの古代文明からユダヤ教・キリスト教・イスラム教など現在も残る多くの宗教や文明に残された共通点「神(または神に類似する者)によって人類は産み出されるが、最後はその存在によって滅ぼされる」という神話を指示しているのだと思われる。
創生と滅亡。
極論に思われるかもしれないが、この映画は「創生と滅亡の意味。滅亡は悲しみではなく愛するが故、楽園(天国)に迎え入れる行為ではないのか? 」とわたしに訴えてきた。
愛から産まれる滅亡…… 愛するが故に滅亡させる……
そして次の楽園に迎え入れる生命を創造し、また滅亡させる。
天国という楽園に迎え入れる愛から行われる創造と滅亡……
アンドロイドが今回も出るが、随所にそのアンドロイドに
魂があると思わせる行為が見て取れる。
人間はそれを認めないが、もし彼に魂が備わっているのであれば? 誰が彼に魂を授けたのか?
主人公の言葉「(神はいなかったね。彼らが創造主だといわれて)では、彼らを想像したのは? 」
そうこれは本当の創造主の存在肯定を匂わせている。クリスチャンの意見としてではあるが、生命とは魂がなければ人間であっても電気信号や化学反応で動く有機物のマシーンでしかない。つまりアンドロイドの彼と同じなのだ。
最後に人間を想像した者の星へと主人公とアンドロイドは旅立つ。おそらくその星に着いた時、エイリアンによって彼らは死んでおり、創造主の星も彼らが乗ってきた船に乗っていた多くのエイリアンに滅ぼされただろう。彼らが星に着く前に、完成品の生物兵器を積んだ彼らの船は様々な生命を創造した星に向かった事だろう。
しかしその一隻が地球に着く前にエイリアンが産まれるというトラブルが起こって、「エイリアン」に出てくる星に落ちたのだろうと思うのは行き過ぎだろうか?