「リドリーから熱烈なファンへ」プロメテウス キューブさんの映画レビュー(感想・評価)
リドリーから熱烈なファンへ
一つ言えるのはエイリアン・サーガのファンなら間違いなく満足できる、ということだ。正直この作品は続編があること前提と言える。それに数々の引用や、エイリアン・シリーズとの関連性の暗示に気づくことができれば十分だ。
実際、私はそれなりに満足した。序盤、漆黒の宇宙に浮かぶ惑星や、その地表面など美しい映像がこれでもかと映し出される。ここ最近映画館で「宇宙もの」を見ていなかったせいか余計に感動してしまった。エイリアン・サーガらしくグロテスク(といってもシリーズを知るなら言うほどでもないが)で、美しさとのコントラストが余計に残酷さを際立たせている。「エイリアン」を彷彿とさせるシーンが多いのも嬉しい。
その後の乗組員の紹介場面は面白くない。「エイリアン」でこの場面が記憶に残っている理由は、その独特の生活感や最先端の技術を普通に扱っている点が上手く描かれていたからだ。今回はその辺は適当に、早々と探索に出かけてしまう。個人的にうんざりしたのはこの探索シーン。幾度となく出かけて「何かを見つける→大喜びする→異変に気がつく→脱出」の繰り返しで、ワンパターンだからだ。しかも初めの方は犠牲者が出るわけでもないから、さらにだれる。
未知の生命体が登場した後もいまいちテンションが上がらない。「エイリアン」の時のように宇宙船という密室空間でいきなり襲われるわけでもなく、「エイリアン2」のように大群で押し寄せても来ない。この登場人物たちは自分で自分の首を絞めてるに過ぎないのだ。だからどのキャラクターも、どういうわけか感情移入できず「自業自得」といった感じが漂う。
だがそのキャラクターの中でも唯一素晴らしいのが、マイケル・ファスベンダー演じるアンドロイド、デヴィッドだ。「アラビアのロレンス」の台詞を口ずさみながら、髪の毛をロレンスのように整える。誰もいない薄暗いプロメテウス号の中を整然と歩く彼の姿は、不気味でいてどこか哀愁漂う。任務を遂行するための純粋な行動なのか、それとも悪意があっての行動なのか、かなり微妙なのも魅力の一つだ。従来のアンドロイド像を覆すまでには至っていないが、彼は新しい形を提示することには成功した。
結論として「人類の起源」は結局は明かされない。でもSFが好きなら、そのストーリーには心が躍るだろうし、宇宙船の造形や近未来風の武器・乗り物も楽しめるだろう。久々に「宇宙もの」で満足できた。是非とも次回作が見たい。
ちなみに「エイリアンの起源」にはかなり迫っている。なにしろ創造主がリドリー・スコットだからね。
(2012年9月17日鑑賞)